2022 Fiscal Year Research-status Report
サイバー攻撃に対する国家機関の対抗措置の正当化に関する研究
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21K13209
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
山本 和輝 東京経済大学, 現代法学部, 講師 (10880817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 正当防衛 / 緊急避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画の通り、2022年度は、2021年度に引き続き、第一に、国家機関による正当防衛・緊急避難は可能かという原理的問題につき、(特にドイツの)議論状況の調査を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 ドイツでは、国家機関に属する者が高権的行為を行う場合であっても、無制限に刑法上の正当化事由を援用しうるとする「刑法説」が通説である。刑法説は、刑法上の規範が国家機関による行為の適法性を基礎づけうるとする理解を前提とするが、この前提理解に対しては根強い批判がある。そのため、刑法説を批判ないし修正する見解も有力である状況にある。 以上の調査結果については、拙稿「国家による緊急救助(1)」現代法学44号(2023年)27頁以下にて公表を開始することができた。 第二に、上記研究と並行して、サイバー攻撃に対する対抗措置の正当化に関する研究の準備を開始した(研究②)。研究②については、ドイツの議論状況を中心に調査しているところであるが、わが国と同様、刑法学に関する研究は活発とは言い難い状況にあることが明らかとなった。もっとも、刑法学からの研究が全く存在しないわけではなく、サイバー攻撃に対する対抗措置につき正当防衛の成立を認めるためにはいかなるハードルがあるのかを論じるものが確認された(Carsten Momsen, "Active Defense" gegen Hackerangriffe als Ausuebung des Notwehrrechts?, in: Ausgleichende Gerechtigkeit, Festschrift fuer August Nacke, Plovdiv 2016, pp. 192 ff.など)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通り、研究①につき、国家機関による正当防衛・緊急避難の可否に関する研究成果の公表を開始することができた。また、研究②についても外国の議論状況を把握するための準備作業を進めることができている。 ゆえに、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、まず研究①につき、引き続き研究成果の公表を行うことにより、連載の完結を目指す。次いで研究②につき、引き続き外国の法状況・議論状況の把握に努め、サイバー攻撃に対する対抗措置の正当化にあたっては、いかなるハードルがあるのか?を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、研究成果の報告を目的とする出張が複数回ありえるものと想定していた。しかし、実際には、なおも継続する新型コロナウィルス感染症の影響により、研究会自体がオンラインで実施されることが多く、出張する機会が発生しなかった。その結果、旅費分相当額が次年度に繰り越しとなった。 次年度も引き続き出張旅費として使用することを計画しているが、なおも出張機会がない場合は研究資料等の購入費に充当することも検討している。
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