2022 Fiscal Year Research-status Report
児童の情動コンピテンスに関する教師の認識枠組みの検討
Project/Area Number |
21K13570
|
Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
芦田 祐佳 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (10896640)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 情動コンピテンス / 小学校教師 / 認識 / 教師教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,令和3年度に実施した文献調査と質問紙内容の精査を踏まえ,大阪府内の2つの自治体で勤務する小学校教師433名に対して質問紙調査を行った。当初の研究計画では,小学校教師が情動面で有能だと感じる児童の特徴のみに焦点をあてて調査を行う予定であったが,先行研究の動向を踏まえ,小学校教師が情動面で有能だと感じる教師自身の特徴も検討することとした。 質問紙調査の結果,小学校教師が情動的に有能だと感じる児童と教師の特徴が自由記述式の回答より抽出され,その回答に教師のメタ情動,生徒指導・学級経営に関する信念,教職に対する信念,教職経験年数が作用していることが明らかとなった。この結果から,情動的に優れた能力を発揮する児童の姿として教師が想像し期待するものが教師間で異なるため,教師がそれらを相互に共有し見直しを図れるようにする必要が指摘された。 また,教師自身の情動面の有能性に関しても,児童や同僚,保護者等と関わるときの心の動かし方や業務遂行の態度等に対して,教師たちが自他の期待する姿に左右される可能性が示唆された。そして,本研究の結果をもとに,教師の勤続と成長を支える環境づくりの視座が構築された。ただし,教師自身の情動面の有能性に関しては,それが日本の成人として一般的に期待され意識されているものなのか,それとも教職に就く者に特有に期待され意識されているものなのかが判然としない。そこで,令和4年度末には,日本の成人1200名に対する質問紙調査を新たに計画し,調査結果の比較を行うよう研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から1年遅れて質問紙調査を実施する運びとなったが,調査計画を念入りに立てて実施したため,質問紙を回収したあとの分析と結果整理が円滑に進んだ。また,調査結果を踏まえて,当初の計画にはなかった一般の成人向けの質問紙調査にも着手済みであり,当初の計画以上に研究成果が積み上がってきている。研究成果の公開にあたっては,令和5年度に複数件の発表ができるようすでに原稿等がまとめられている状況であり,滞りなく報告できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,令和4年度に実施した質問紙調査の結果を国内外の学会において発表し,論文としても整理する予定である。具体的には,令和4年度末に計画した一般の成人向け調査を令和5年度初旬に実施し,既実施の現職教員調査の結果と比較して8月に報告する予定である。また,令和3年度に実施した教員志望学生に対する調査と現職教員に対する調査の結果を比較し,その研究成果も整理して発表する予定である。さらに,令和5年度中旬に現職教員に対するインタビュー調査を追加で行い,教師たちが情動面で有能だと感じる児童や教師の特徴がどのような教師の考え方や経験のもとに形成され認識されるに至ったのかを質的に明らかにする。このインタビュー調査の結果についても調査が済み次第まとめ,発表に向けて準備する。
|
Causes of Carryover |
質問紙調査の実施に関わる諸経費が当初の予定よりも安価におさまったため。また当初の計画にはなかった新たな発展的調査を行うにあたり,相当額の費用を留保しており,次年度の調査運用費用として支出予定である。
|