2021 Fiscal Year Research-status Report
ヨスト解を用いたスプリットステップ量子ウォークの研究
Project/Area Number |
21K13846
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
和田 和幸 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (80780197)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スプリットステップ量子ウォーク / 分散関係 / フレドホルム指数 / Witten指数 / ユニタリ同値類 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の目標は,スプリットステップ量子ウォーク(SSQW)から導かれる転送行列を元に,その分散関係を調べる事であった.SSQWは標準量子ウォークの場合と異なり,特に転送行列の行列式が常に1とは限らない点が特徴である事が分かった.しかしながら,長距離条件の下で分散関係を考察し,ヨスト解の構成の準備まで整える事ができた.これは本研究の到達点の一つである弱収束定理の証明が出来る見通しが立った事を意味する. スプリットステップ量子ウォーク(SSQW)を導入するには,最大で8つの実パラメータを導入する必要があるが,本質的に何個のパラメータでSSQWの性質が決まるかを,ユニタリ同値類の観点から明らかにした.特に,Kitagawaらによって導入されたSSQWと,Suzukiが導入したSSQWは互いにユニタリ同値である事を証明した. SSQWのフレドホルム指数について,「遠方で漸近的に2相系に近づいていく」条件の下では具体的な値が明らかになっている.これを「遠方で漸近的に周期的な2相系に近づいていく」条件に拡張することができた. SSQWのフレドホルム指数についてはいくつかの結果が得られている.しかし,フレドホルム指数はスペクトルに然るべきギャップがある事を仮定した上で議論が進む.特にスペクトルギャップがない場合の指数についてはこれまで議論がされてこなかった.そこでフレドホルム指数の適切な拡張とみなされるWitten指数をSSQWの文脈に導入し,その具体的な値を求めた.特に,ギャップがある場合はWitten指数は整数値を取るが,ギャップが無い場合は半整数を取る事が判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定として,SSQWのヨスト解を構成する所までを区切りとしていたが,構成する前段階にて年度の区切りを迎えてしまった.標準量子ウォークの場合に成り立っていた「行列式が常に1」という性質が欠落している部分に拠る所が大きい. 一方で,フレドホルム指数やWitten指数をキーワードとする指数定理に関する結果について進展を得る事ができた.
全体としていくつかの研究成果を得る事が出来ているが,当初の研究計画で取り組もうとしていた課題については若干遅れが出ているので,全体として「やや遅れている」と判断をした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き,SSQWのヨスト解の構成に取りかかり,修正波動作用素の構成・弱定理の証明へと繋げていきたい. SSQWのWitten指数を明らかにする過程で,スペクトルシフト関数が自然に現れた.スペクトルシフト関数は量子系の散乱現象に由来する情報を持っている.今後はこれまで明らかにされてきた指数定理と,散乱理論との関係をスペクトルシフト関数の視点から明らかにしていきたい.
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Causes of Carryover |
当初は共同研究を進めるため,年に2,3回程の共同研究のための出張を計画していた.しかし,コロナ禍の影響で共同研究のための出張を計画することができなかった。オンラインでの研究打ち合わせが中心だったため,オンラインでの研究打ち合わせを円滑に進めるためのタブレット・及びその周辺機器の充実に予算を充てた.翌年度は,今年度分の差額分と合わせて共同研究のための出張・書籍の充実等に充てたい.
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Research Products
(5 results)