2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a method evaluating the surface roughness of neutron guides for a measurement of the permanent electric dipole moment of the neutron
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21K13940
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今城 想平 大阪大学, 核物理研究センター, 特任研究員 (10796486)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超冷中性子 / 中性子ガイド管 / BRDF / 反射モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
波長より大きなサイズの表面粗さに対する中性子の光学的反射を取り扱うために、可視光線の光学と中性子光学とのアナロジーに基づいて、コンピューターグラフィックスの物理ベースレンダリングで使用される可視光線の散漫散乱モデルであるマイクロファセットBRDFモデルを中性子輸送シミュレーションに導入し、2020年度に行ったガイド管の超冷中性子 (UCN) 透過実験の解析を行った。また、測定したガイド管と同じ工程で作成されたサンプルの原子間力顕微鏡による観測結果を、2次元フーリエ変換によってUCNの波長サイズで観測可能な解像度に粗視化して表面の法線ベクトル分布を解析し、その結果をシミュレーションに組み込んだ。この結果として、ガイド管へのパルスUCNの入射角増加に伴う透過率の減衰傾向と、表面粗さによるUCNの散漫散乱に起因する飛行時間分布のパルス形状の変形をほぼ再現することに成功した。 モデルの再現性をさらに検証するためガイド管への斜入射用フランジを新たに作成し、既存の0°, 15°, 30° に加えて 10°, 20° 入射でのUCN透過率測定実験を2021B期のJ-PARC MLF実験課題で行った (proposal No.: 2021B0309)。また透過率の正確な評価のためにガイド管に入射するUCNフラックスの直接測定が必要であったため、そのためのフランジも作成し測定を行った。この実験解析によって、現状の暫定的な結果ではあるが、反射全体のうち完全拡散反射(Lambert反射)の占める割合が約3%と見積もられ、TRIUMFで過去に測定されたガイド管の輸送性能と合致する結果を得ることができた。 実験ではガイド管下流の検出器直前にポリエチレン製のリングコリメーターを設置し、UCNの発散角測定も行ったが、この時の透過率は浅い入射角においてシミュレーションの方が5~10%ほど大きい結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、現状の実験解析には入射UCNの発散角に由来する系統誤差が存在する可能性、または現状の反射モデルの再現性に限界がある可能性があり、UCN反射モデルを正確に同定するためにはさらなる評価実験が必要だといえる。しかしながら透過率で評価する限りそのずれは10%程度と小さく、2020年度から測定してきたガイド管の性能を現状のシミュレーション解析によってほとんど説明することに成功している。この結果はすでに十分にインパクトのあるものであり、ここまでの結果をもって投稿論文の作成を現在進めている。 申請時に提案した、表面粗さを十分に把握したサンプルを用いたUCN散漫散乱の精密測定のための真空チャンバーの設計・作成はまだ行えていないが、「大きな表面粗さが存在するガイド管の透過率を説明できる反射モデルの同定」という当初目的の一つを達成することができているため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
TUCAN実験の既存のガイド管の表面粗さ測定は十分に達成できたものの、輸送後のUCNの発散角分布が実測とシミュレーションでわずかに異なっており、ガイド管へ入射したUCNの発散角分布が系統誤差要因になっている可能性が疑われる。また、この誤差は反射モデルの限界に起因する可能性もあり、さらに既存のガイド管よりも表面が滑らかなガイド管の開発を達成した場合に現状の反射モデルで十分な再現性を得られるかを確認することも必要である。そのため研磨した平板サンプルを用いてのUCNの散漫散乱測定が行えるように平板サンプルとそれを設置する真空チャンバーを準備する。設計にあたっては現状の反射モデルにマイクロラフネスモデルを組み合わせた反射モデルをシミュレーションに組み込んで実験見積もりを進める。この平板サンプルを用いた実験を、入射UCNの発散角測定実験と合わせて2022B期のJ-PARC MLF実験課題に提出し、測定をねらう。発散角測定実験に必要な装置については2021年度にすでに準備済みである。 研究代表者の属するTUCAN実験の研究グループがUCNの2次元検出器であるCASCADE-U検出器を2022年度中に購入する予定があるため、上記の計画はCASCADE-U検出器の使用を考慮しつつ準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
散漫散乱測定のための真空チャンバーの設計前に既存の実験結果を十分に説明する反射モデルを発見することができたため、真空チャンバー作成の優先度が下がり後回しになったことで余剰金が発生した。真空チャンバーとサンプルの作成は2022年内に行う予定である。
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Research Products
(1 results)