2021 Fiscal Year Research-status Report
Verification of a novel theory of electron scattering caused by plasma waves
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21K13979
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北原 理弘 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (30805487)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 波動粒子相互作用 / 地球放射線帯 / プラズマ波動 / ピッチ各散乱 / 宇宙プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、宇宙空間に普遍的なプラズマ波動の一種であるホイッスラーモード波動と低ピッチ角の電子との相互作用に着目し、電子散乱に関する新しい理論を考案した。この新しい電子の散乱理論を実証することを目的として、我々は(課題1)新理論に対するパラメータ依存性の検討、(課題2)宇宙空間におけるあらせ衛星の観測データを用いた解析、(課題3)高精度解法を用いたの大規模シミュレーションによる再現実験、の3つの異なる研究課題を設定している。本年は主に(課題1)と(課題2)の研究を実施するに際して現れた問題点の解決を行なった。まず第一に、我々の考案した電子散乱理論をより一般化に成功した。従来の我々の理論は低ピッチ角の共鳴電子のみに限定して電子の運動を予測するものであったが、Hamilton力学の手法を適用することにより幅広いエネルギー・ピッチ角の粒子に対して電子の運動を予測する理論が構築できた。これにより計画段階では(課題1)のパラメータ依存性考察において低ピッチ角電子に限っていたが、これらの制約が解かれ、当初想定していた電子とホイッスラーモード波動との相互作用のみならず、陽イオンと電磁イオンサイクロトロン波動の相互作用などの物理現象にも適用が可能となった。この理論研究については国内学会において発表済みであり、現在投稿論文としてまとめている。また(課題2)の実観測のデータ解析に際して、超高時間分解能プラズマ波動データの較正作業において、短時間離散フーリエ変換を用いた較正における窓関数の影響を理論的に考察し、その較正過程における意図しない変調成分を除去する方法を考案し、実データへ適用することにより定量的に有用性を評価した。この研究は国内研究集会において発表した。現在その方法論部分を海外において特許出願中であり、また方法論に関する論文が査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が今まで考案してきたプラズマ波動による電子の散乱理論(低ピッチ角の異常散乱)に関して、Hamilton力学の手法を取り入れることにより、より広いエネルギー・ピッチ角範囲の電子に対する一般化された理論の構築に成功した。この理論は現在投稿論文を準備中である。この研究は(課題1)新理論のパラメータ依存性の検討を実施する上で重要な進展であり、さらに(課題3)高精度解法を用いたの大規模シミュレーションの実施においてもそのコード開発方針を示唆する重要な理論研究である。また、当初想定していた電子とホイッスラーモード波動との相互作用のみならず、陽イオンと電磁イオンサイクロトロン波動の相互作用などの物理現象にも理論が適用が可能となった。また(課題2)の実観測のデータ解析に際して、考案したデータ較正手法は、国内研究集会において発表済みであり、現在その方法論部分を海外において特許出願中である。また方法論に関しては論文査読中であり、実観測データへの適用部分に関して現在投稿論文を準備中である。これらの研究の進展を踏まえ、設定したそれぞれの研究課題に関して概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年得られた理論の新展開、すなわち、より一般的なプラズマ波動による粒子散乱理論の(再)構築により、より広範囲のエネルギー・ピッチ角の粒子に対して理論が適用可能になっただけでなく、より多様なプラズマ波動現象へ理論が適用可能となった。この再構築された理論を用いてパラメータ依存性を考察することにより、普遍的な粒子散乱の特性を解明することを目指す。また、この理論の再構築により、(課題3)高精度解法を用いたの大規模シミュレーションによる再現実験の数値解法を一部簡略化できる可能性を見出した。これは、従来の我々の理論が3次元実空間+3次元速度空間におけるNewton力学の文脈で構成されたのに対し、本年に再構築された理論は簡約化された2次元位相空間におけるHamilton力学の文脈で記述される。従って、大規模ブラソフシミュレーションの最も単純な設定においては、計算次元を6次元から2次元に縮退させられる可能性がある。この点についての実現可能性を検討し、(課題3)の大規模シミュレーションコードの開発を進める。また現在特許出願中の波形データの精密較正手法を用いてデータ解析を進めることで、既に着手しているあらせ衛星で観測された散乱現象のデータ解析を進める。
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Causes of Carryover |
新型感染症の蔓延等の国際的混乱によって計画段階で参加予定であった国内学会・国際学会への参加費が困難となったこと、および投稿中論文の査読およびその返信が長期化したため論文投稿料の支払いが年度内に発生しなかったことにより、次年度使用額が生じた。発生した次年度使用額は出版が遅延している当初から投稿予定であった論文の投稿料として使用する他、新たに論文としてまとめている理論研究の論文投稿料として使用する。また研究代表者の所属が変更になったため、当該研究のデータ解析についての打ち合わせのために、名古屋大学宇宙地球環境研究所のデータサイエンスセンターを訪問する予定であり、これらの旅費等に使用する。
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Research Products
(3 results)