2021 Fiscal Year Research-status Report
太陽系始原的固体物質の酸素同位体進化をもたらした原始太陽系円盤の物理化学条件
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21K13986
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
山本 大貴 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸素同位体交換 / 原始太陽系円盤 / 非晶質ケイ酸塩 / CAIメルト / COガス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は非晶質ケイ酸塩/CAIメルトとCOとの酸素同位体交換反応をおこなった。 フォルステライト (Fo) 組成の非晶質ケイ酸塩-CO間の同位体交換実験は、温度673から883 K, C18Oガス分圧 0.05, 0.3, 1 Paでおこなった。加熱後物質は出発物質に対して18Oに濃集しており、非晶質FoとCOガスとの酸素同位体交換の進行を示している。753から853 Kにおいて、非晶質FoのCOとの同位体交換はH2Oに対して2-100倍程度遅く、加熱時間に対して直線的な時間変化 (ガス供給律速) を示した。ガス供給律速の時の同位体交換速度を温度・COガス分圧の関数として取得した。673から703 Kでは非晶質構造内部の拡散過程に律速された同位体組成の時間変化が観察され、得られた拡散係数は非晶質Fo-H2O間の拡散係数のアレーニウスプロットの延長線上にプロットされた。このことは、非晶質構造中の拡散種は酸素原子の可能性を示す。原始太陽系円盤への応用から、非晶質Foは、ケイ酸塩-CO-H2O間の同位体交換平衡を早める触媒として働くことが解明された。 CAIメルト-CO間の同位体交換実験は、1420, 1460°C、 C18Oガス分圧 0.1, 0.5, 1 Paでおこなった。実験の結果、CAIメルトとCOとの同位体交換速度はH2Oの場合に対して圧倒的に遅いことがわかった。また、得られた酸素同位体拡散プロファイルから、CAIメルト表面でのCOガスの同位体交換効率はH2Oの場合に対して2から3桁ほど小さいことがわかった。原始太陽系円盤への応用から、CAIメルトと円盤ガスとの同位体交換速度はCAIメルト-H2O間の同位体交換速度により決定され、最高温度 (~1400°C) において溶融CAIは、水蒸気圧0.1 Pa以上の条件下で2から3日加熱されたという熱履歴が推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非晶質フォルステライト-CO間の同位体交換、CAIメルト-CO間の同位体交換の両反応の速度が決定され、原始太陽系円盤への応用までおこなえている。
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Strategy for Future Research Activity |
<非晶質ケイ酸塩-CO間の酸素同位体交換反応> エンスタタイト組成の非晶質ケイ酸塩ダストとCOとの酸素同位体交換実験もおこない、ケイ酸塩ダストの組成依存性に関しても議論をおこなう。全てのデータ取得後、国際誌へ論文を投稿する。
<CAIメルト-CO間の酸素同位体交換反応> 上記データに関する論文を国際誌へ投稿する。開放系でのCAIメルト蒸発実験結果から、2から3日の継続的な加熱ではメルトから比較的揮発性の高いMg, Siの過剰な蒸発がおこってしまうことが考えられる。そのため、蒸発物質の再凝縮プロセスの可能性を検討する必要がある。今後は、蒸発過程だけでなく再凝縮の過程も考慮した計算をおこない、溶融CAI形成時の全圧や酸化還元状態などの物理化学的条件の推定をおこなう。
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Causes of Carryover |
残額の有効な使用方法がなく、残額は次年度の少額物品の購入に充てる
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