2022 Fiscal Year Research-status Report
太陽系始原的固体物質の酸素同位体進化をもたらした原始太陽系円盤の物理化学条件
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21K13986
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 大貴 九州大学, 理学研究院, 助教 (00846868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非晶質珪酸塩 / 難揮発性包有物メルト / 水蒸気 / 一酸化炭素 / 酸素同位体交換 / 原始太陽系円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該当年度では、地球外物質の酸素同位体多様性をもたらした太陽系始原固体物質とCOガスとの酸素同位体交換反応に注目し、溶融CAI模擬物質とCOガスとの低COガス環境下での酸素同位体交換実験をおこなった. 実験では、CAIメルトとH2Oガスとの酸素同位体交換実験に使用した加熱炉に改造を施し低COガス環境下で加熱可能なシステムを構築した. 温度やCOガス分圧を変えた幾つもの加熱条件でCAIメルトの酸素同位体交換実験を実施した. 実験の結果、メルト表面におけるCOガスとの酸素同位体交換効率はH2Oガスに対して3桁程度低く、メルト内部の拡散速度はH2Oの場合と一致した. このことは、メルト表面でのCOガスの乖離効率がH2Oに対して3桁程度低い可能性を示し、メルト内部の拡散は酸素自己拡散であることを示している. 得られた同位体交換速度データを原始太陽系円盤へ応用したところ、溶融CAI加熱時にはCO-H2Oガス間の同位体組成は極めて早い段階で平衡に達する. これにより、CAIメルト-COガス間の同位体交換効率が悪いことから、COガス存在化でもメルト-ガス間の同位体交換の時間スケールはH2Oのみを考えたときと大きく変化せず、CAIメルト-H2Oガス間の同位体交換反応がメルト-ガス間の同位体平衡となる時間スケールを決定していることがわかった. また非晶質フォルステライトとCOガスとの一連の同位体交換実験をおこない、表面での同位体交換効率と内部への酸素同位体交換プロセスに関する詳細なメカニズムや速度を推定した. この結果から、非晶質ケイ酸塩がケイ酸塩ダスト-CO-H2O間の同位体平衡を早める触媒として働く可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度には溶融CAIメルトとH2Oガスとの酸素同位体交換速度が決定し、今年度は一連の溶融CAIとCOガスとの酸素同位体交換実験を実施し、溶融CAI-H2O-COガス間の酸素同位体交換に関する全ての基礎的速度パラメータの推定が完了した. この成果から、太陽近傍で溶融したCAIが経験する酸素同位体進化をモデルすることが可能となり、加熱時間、冷却等の推定につなげた (この成果を国際誌に投稿した). また、非晶質フォルステライトとCOガスとの一連の酸素同位体交換実験に関しても終了し、円盤中低温領域におけるケイ酸塩ダストの酸素同位体進化のモデル化に成功した.この成果は国際誌への投稿間近である. このように本研究で注目すべき反応に関する一連の実験は終了し、それに対応する十分な成果が得られていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
非晶質フォルステライトを対象として実施したCOガスとの酸素同位体交換実験を、エンスタタイト組成 (MgSiO3) の非晶質ケイ酸塩に対しても同様に実施する. H2Oとの同位体交換実験において、同位体交換速度の非晶質フォルステライトとエンスタタイトの間での明確な違いが観察されているため、COガスとの同位体交換実験においても異なる同位体交換速度が得られる可能性があり、その違いは非晶質フォルステライトとエンスタタイトの間の構造の違いに対応するため、反応メカニズムの詳細な考察において重要である. CAIメルト-COガス間の同位体交換実験で得られた同位体交換速度パラメータも考慮しながら、非晶質ケイ酸塩とCOガスとの同位体交換メカニズム・速度を決定・考察する. 非晶質ケイ酸塩ダストとCOガスとの酸素同位体交換実験の結果とそれから見えてきた原始太陽系円盤での始原的固体物質の酸素同位体進化の描像を国際誌に投稿する.
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