2022 Fiscal Year Research-status Report
Thermochronometric investigations of the Southwest Japan Arc: toward elucidating the mechanism of a large earthquake along the Nankai Trough
Project/Area Number |
21K14021
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
福田 将眞 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (70883479)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱年代学 / 西南日本弧 / 南海トラフ大地震 / 四国山地 / 中国山地 / 隆起・削剥 |
Outline of Annual Research Achievements |
南海トラフ大地震のトリガーとなる西南日本弧の歪の蓄積・解放過程の理解に資するためには,陸域における地質時間スケールの非弾性歪成分(≒永久変形)の推定が鍵となる.西南日本弧は海洋プレートの斜め沈み込みや隆起の原因が不明確なことなど,島弧としては比較的複雑なセッティングであり,弾性歪の解放プロセスは統一的な理解が得られているとは言い難い.そこで,これまで筆者らが実施してきた東北日本弧での検討を念頭に,西南日本弧での系統的な熱年代法の適用を行い,両者を比較することで西南日本弧の島弧としての特性や変形過程の把握を試みる.本研究では,四国・中国山地に着目し,これらを横断する南北方向の2本の測線(鳥取―徳島,島根―高知)沿いに基盤岩である花崗岩類のサンプルを採取し,閉鎖温度が低温領域の熱年代法であるフィッション・トラック法や(U-Th)/He法(以下,それぞれFT法,He法)による隆起・削剥履歴の推定を試みる. 2021年度に中国山地(鳥取~岡山),2022年度には四国山地(愛媛,香川,徳島)および中国山地(島根~広島)でのサンプリングを行い,鉱物分離および年代分析を進めてきた.結果として,いずれの地点においても岩石の形成年代よりも若い14~6 MaのアパタイトHe年代,76~9 MaのアパタイトFT年代,84~8 MaのジルコンHe年代が検出され,各手法の閉鎖温度に対応した最近の隆起・侵食に伴う年代の若返りを記録している可能性が示唆された.今後は両山地の体系的な年代値の傾向から,鉛直成分の非弾性歪速度の推定に寄与する隆起・削剥データの取得を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の夏に予定していた中国山地および四国山地のサンプリングをコロナ禍で断念したため年代分析の着手が大幅に遅れ,2022年度初頭の時点で5点のアパタイトFT年代が得られるのみであった.2022年度の成果としては,5月に四国山地,8月に中国山地でのサンプリングを終え,四国山地の地質試料については鉱物分離を済ませた段階である.また,研究協力者から提供いただいたサンプルを含め,新たに10点のアパタイトHe年代と10点のジルコンHe年代を取得した.特に四国山地については,熱年代法の種類を問わず概ね10~6 Ma頃に年代値が集中しており,四国山地では①第四紀の隆起・削剥の影響が小さく十分な若返りが起こらなかった,もしくは②第四紀以前(中期中新世ごろ?)に急激な隆起・侵食が起こったが現在はテクトニックに安定している,といった可能性が明らかになりつつある.一方で,中国山地の鉱物分離および年代分析がほとんど進んでいないことや,熱年代分析についても申請当時の計画からは遅れを来しているため,1年間の補助事業期間の延長を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は昨年度採取した中国山地の試料について鉱物分離を外注予定であり,既に得られている四国山地の試料と併せて年代分析を実施する予定である.分析の数量としては中国山地・四国山地で各10試料程度のアパタイトおよびジルコンHe分析の外注の依頼を検討しており,アパタイトFT年代についても東濃地科学センターで実施予定である.2022年度に得られた年代データと統合し,各山地を南北に横断する系統的な熱年代学的データから,隆起・削剥過程および隆起形態の復元を試み,得られたデータに基づいて学会・研究会や投稿論文としての成果の公表を目指す予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により現地調査の遅れが生じ,2022年度に予定していた年代分析を行えなかったため、これに係る費用が次年度使用額として生じた.次年度使用額は、中国・四国山地における数十点の年代データの取得を目的として,既に採取済みの地質試料の鉱物分離および年代分析の専門業者への依頼費用や,研究協力者との打ち合わせにかかる旅費として使用する.
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Research Products
(2 results)