2021 Fiscal Year Research-status Report
SiスピンMOSFETの実現を可能とする低界面抵抗構造の創製
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21K14213
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石川 瑞恵 日本大学, 工学部, 講師 (60751865)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SiスピンMOSFET / スピン伝導 / ホイスラー合金 / 界面抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい動作原理に基づくシリコン(Si)スピン電界効果トランジスタ(SiスピンMOSFET)は,近年進展が目覚ましいIoT(Internet of Things : モノのインターネット)技術を支える電子機器の更なる小型化・高速化・低消費電力化への貢献が期待できる,極めて重要な新型半導体デバイスである.SiスピンMOSFETの実現には,Siへのスピン注入技術が最重要課題である.本研究では,これまでのSiスピンMOSFETの研究で得られた知見に基づき,スピン信号の低減を招く界面抵抗に着目し,低界面抵抗構造を創製することにより,スピン信号強度を増大させることを目的とする. 今年度当初は,高濃度Si上へのCoFeB/極薄MgO積層膜の結晶成長を検討しようと試みたが,使用する予定だった当研究室で所有するスパッタリング装置が2021年2月の福島県沖地震により故障し,試料作製時に利用予定であった本学研究施設内のクリーンルームに設置されている設備にも大きな損傷が生じてしまい研究の継続断念を余儀なくされた.さらに昨今のコロナの影響により,研究生・ゼミ生の研究室内での密を避ける施策により,実験実施期間が通常に比べ長引くこととなった.そこで今年度はSi基板への低界面抵抗構造の形成に必要な高濃度Si層の作製を実施し,n型およびp型高濃度Si層の作製・評価を行った.高濃度n型Si層では,作製時に行うアニール温度によって表面粗さが変化していることを明らかにした.これは,今後高濃度Si層上にCoFeB/極薄MgO積層膜を形成する際,極薄MgO薄膜の結晶性に影響するため,作製条件の最適化が必要と考えられる.また,試料作製時に必要となる素子加工の条件出しを進め,強磁性体電極とSiの加工条件を確立することに成功した.来年度は遅延している研究を急ぎつつ,スピン信号測定器の立上げも進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Si上へのCoFeB/極薄MgO積層膜の結晶成長において使用する予定だった当研究室で所有するスパッタリング装置が2021年2月の福島県沖地震により故障してしまい,修理および再条件出しに時間を要した.また,試料作製時に利用予定であった本学研究施設内のクリーンルームに設置されている設備にも大きな損傷が生じてしまい研究遅延の原因となった.さらに昨今のコロナの影響により,当研究室に所属している研究生・ゼミ生の研究室内での密を避けるため,実験実施日程を調整した結果,研究期間が通常に比べ長引くこととなった.さらに2022年3月にも福島県沖地震が発生し再度スパッタリング装置に不具合が発生しており,当初予定していた計画が遅延している現状である. 一方,Si基板への低界面抵抗構造の形成に必要な高濃度Si層の作製を実施し,作製条件によるSi表面粗さの影響を評価した.高濃度n型Si層では,作製時に行うアニール温度によって表面粗さが変化していることを明らかにした.また高濃度p型Si層の作製では,これまで試した作製条件のいずれにおいても大きな凹凸が確認された.この結果は,極薄MgO膜の結晶性に影響する重要な結果であり,高濃度Si層の作製条件の最適化が今後必要と考えられる.また試料作製時に必要となる素子加工の条件出しを進めることができた.素子加工では,反応性イオンエッチング装置(RIE)による加工条件の検討を行い,強磁性体電極とSiの加工条件を確立することに成功した.さらに,本研究で来年度以降に使用予定のスピン信号測定器の立上げについては,必要備品の準備を前倒しで完了することができたため,来年度より測定器を立上げ,動作確認を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは,今回故障したスパッタリング装置の修理および再条件出しを早急に行い,昨年度研究予定だったSi上へのCoFeB/極薄MgO積層膜の結晶成長を急ぎ進める予定である.また試料作製のための微細素子加工については,当初は学内施設を利用した加工を検討していたが,地震の影響により修理に時間を要することから,東北大学などの他大学の微細加工施設を利用する予定である.これにより,当初予定していた微細加工の精度を上げることが可能となり,より大きなスピン信号の測定が期待できると考えている.また,当初予定していた微細加工素子のスピン信号評価も合わせて行えるよう,スピン信号測定器の立上げを急ぐ必要がある.これについては,本研究費で準備する予定であった測定備品の一部を研究者が2018年度まで所属していた大阪大学基礎工学研究科の浜屋研究室よりお譲りいただくことができたため,本研究室所有の装置と組み合わせて活用する予定である.さらに,本研究費によって購入予定であったソースメーターやナノボルトメーターについても準備することができたため,前倒しで測定器の立上げを行うことが可能となった.今後は学内のコロナによる密な状況の緩和が予定されることから,研究生・ゼミ生との実験期間の短縮化も見込まれているため,今年度よりも研究の進捗が早められると考えている.
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Causes of Carryover |
本年度使用予定だったスパッタリング装置が地震の影響により故障したことで,予定していた実験が順調に進まず,使用予定であった消耗品が減少した.また,スピン信号測定器の立上げのために予定していたソースメーターを準備することができたため,その分の予算を次年度に必要となる備品費として使用することとした.さらに,当初予定していた出張がコロナによりできなかったこともあり,本年度の研究費の使用額が減少した. 来年度からは今年度遅延してしまった研究を本格的に進めるため,スパッタリング装置の修理および再条件出しを早急に完了させ,当初の研究計画通りに研究を進める予定である.また,スピン信号測定器の立上げも来年度早々に行っていく予定である.
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Research Products
(1 results)