2021 Fiscal Year Research-status Report
氾濫原における地表性甲虫類の垂直退避行動と種多様性との関係に関する研究
Project/Area Number |
21K14278
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田中 亘 長崎大学, 工学研究科, 助教 (60795988)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 氾濫原 / 地表性昆虫 / 垂直退避行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,氾濫原の洪水撹乱に対する地表性昆虫類の垂直退避行動と種多様性の関係を明らかにし,近年自然再生の一環として人工的に造成される例が増えつつある人工氾濫原における垂直方向の環境構造(樹木・草本管理)の整備のあり方について示唆を得ることを目的とする. 研究計画に基づき,氾濫原の地表性昆虫類のピットフォールトラップ定期調査を月1回の頻度で行った.調査サイトは,実験区として洪水撹乱を受ける氾濫原(アザメの瀬,牟田部遊水地,巨勢川調整池の3箇所)および対照区としてそれぞれの氾濫原近傍の洪水撹乱を受けない草地を3箇所,計6箇所を選定した.サンプルは持ち帰り同定を順次進めている.現在までに完了したものについて17科52種が記録された.採捕された地表性昆虫のうち個体数が多いのはゴモクムシ亜科であり,現在までに12種を採捕された.このうち大型のゴモクムシについても他の氾濫原に比べ,アザメの瀬において採捕個体数が多く,洪水浸水時に柳の木が生い茂り垂直退避構造可能なアザメの瀬の環境が影響している可能性がある. また,地表性甲虫類の定期調査を行っている氾濫原において水位計を設置し洪水イベントの記録を行った.2021/8/12-14の間に九州北部にて豪雨が発生し,いずれの氾濫原も水没した.特に牟田部遊水地については,近年の浸水状況より研究期間中に洪水撹乱が起こるか懸念があったが,この豪雨により浸水したことでいずれの調査対象氾濫原でも洪水撹乱の前後で地表性甲虫の種多様性の変化を記録することが可能となった. 今後も定期調査を継続し洪水イベント後の種構成や多様性をモニタリングする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に予定していた地表性昆虫のピットホールトラップ定期調査は予定通り行えている.また,各調査サイトにおける水位ロガーによる洪水イベントの記録も順調である.特に牟田部遊水地は冠水頻度が低く数年に一度しか浸水しないため,研究期間中に浸水しないことが懸念されたが,昨年の豪雨で浸水しいずれの調査対象氾濫原でも洪水撹乱の前後で地表性甲虫の種多様性の変化を記録することが可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も定期調査を継続し洪水イベント後の種構成や多様性をモニタリングする.昨年洪水イベントが発生し,地表性昆虫の種構成や多様性が影響を受けた様子を記録することができた.今後の定期調査により,地表性昆虫の種構成の回復過程や洪水イベントからの時間経過と優占種の遷移などを記録していく予定である. 疑似浸水実験として九州各地の氾濫原にて,直径100cmのアクリル円筒を現地の植生を乱さぬように地面に設置し,その中に水を注ぎ,地表性昆虫の挙動(垂直退避型か浮遊型か飛翔型かなど)を観察した.この疑似浸水実験では,アクリル円筒中に補足できる昆虫個体数が少なく十分な観察が行えないことが分かったため,定期調査などで採捕した生体を用いた浸水実験に切り替える.
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Causes of Carryover |
購入予定の地形計測用機器が半導体不足の影響で入荷されなかったため差額が生じた.旅費については,コロナの影響により申請者の組織で他県への出張が制限されたため一部使用できなかった. 次年度使用額については,現地調査に必要な旅費,コンサルへの難同定種の同定委託,地形計測機器の購入に使用する予定である.
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