2023 Fiscal Year Research-status Report
文化的景観の保全に資する動態的持続性の解明と計画論への応用
Project/Area Number |
21K14319
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿久井 康平 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (90779315)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 文化的景観 / 棚田 / 動態的持続性 / 耕作放棄地 / 営み / 担い手 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、担い手が所有・管理する「田」「畑」などの運用状況と地域コミュニティと関わりの深い水利組合、地域組織との関係や農空間の景観保全に係る関係性を考察することを目的とした。また、文化的景観の保全に資する動態的持続性の考察に加え、田畑の営農や耕作放棄地の利活用を踏まえた景観構造の視覚的特徴の解明を目的とした。 泉佐野市日根野荘大木地区を対象とした研究では、農空間の水利システムと地域コミュニティの関係に着眼し、水利システムの構造特性と土地改良区の維持管理の実態把握をもとに、地域の自立的な文化的景観の保全に資する方策について明らかにした。得られた知見より、水利システムの維持管理の負担距離の小さい犬鳴溝や和井における世帯が負担距離の大きい下平井や菖蒲井の保全に加担するなどの負担配分に資する方策、町会や番の取り組みの一環として維持管理に関わる仕組みづくりの構築・連動など、近隣型のコミュニティとの互助のシステムの構築による文化的景観の保全強化の可能性を示し、その成果が都市計画学会論文集(Vol.58(3),pp.1462-1469, 2023年10月)に掲載された。 また、豊能町高山地区の棚田における耕作放棄地を利活用したワイナリー事業の展開事例をもとに、担い手の協働、事業展開や里山経営を通じた景観保全との関連性を明らかにし、動態的持続性の可能性を示した。 さらに、田畑の営農を踏まえた景観構造の視覚的特徴に関する研究として、棚田景観の保全の重要性が示される一方、圃場整備事業が進行する豊能町高山地区を対象に、棚田景観の保全のあり方を考察した研究成果が都市計画学会論文集(Vol.58(3),pp.1493-1500, 2023年10月)に掲載された。加えて、魚津市東山地区の田園集落における眺望景観の視覚的特徴を調査・分析し、市が目指す景観保全、地域の歴史・遺産を保存に資する基礎的知見も得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した当該年度の研究スケジュールに沿って調査・分析を進めることができ、次年度の事例分析の拡充に向けた一定程度の方法論まで進展することが可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で得られた知見や分析の方法論を応用しながら、事例分析の拡充を行う。 引き続き、営みの動態性の分析として田、畑に関する耕作農地や耕作放棄地の営農状況をはじめ、集落や空き家・空き地の状況との対応関係、水利システムの維持管理の実態や方法との関係、植生管理の実態や方法などの関係について、現地調査、地域史の文献調査、地域の担い手や水利組合などの関係機関へのヒアリング調査を実施しながら把握する。 また、得られた知見をもとに、集落固有の文化的景観の重層性やまとまりを示すことができ、保全の計画単位やその強度を示すゾーニングなどの計画論への応用の可能性についても考察を行う。
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Causes of Carryover |
調査予定地における現地調査の情報整理、事例整理にあたる謝金の収支に差が生じた。これらの次年度使用額は、調査旅費や現地調査謝金をはじめ調査分析拡充のために使用する。
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