2022 Fiscal Year Research-status Report
微生物を含む液中における二酸化ウラン表面の微細構造変化
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21K14568
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
北垣 徹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉環境国際共同研究センター, 副主任研究員 (30770036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウラン / 微生物 / 溶解 / チェルノブイリ / 福島第一原子力発電所 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、微生物と二酸化ウランの相互作用について検討した。具体的には、チェルノブイリ原子力発電所の石棺内において確認されたと報告される、微生物による二酸化ウラン溶解の促進効果に関する知見の調査、及び二酸化ウランと微生物の反応実験を実施した。 チェルノブイリ原子力発電所の石棺内においては、石棺の屋根の破損箇所から雨水が流入し、主に下層において水が滞留している。1986年の事故発生時には、核燃料がコンクリート等の構造材と高温で反応し、凝固した燃料デブリが生成したが、これが滞留水中に浸漬している場合は、放射性核種が水中へ溶出する。一方、石棺内においては多様な微生物が確認されており、一部の微生物は核燃料の溶解を促進することが報告されている。どの様な微生物種が溶解を加速させたのか、また、石棺内に生存しているかについては知見が限られていたが、二酸化ウランを酸化させ、水に溶けやすくする微生物等が含まれるものと思われる。同様の微生物が仮に福島第一原子力発電所の炉内で増殖した場合、燃料デブリの溶解が加速される可能性があるため、炉内の微生物叢を把握した上で、炉内環境の管理を継続的に実施していく必要がある。以上を含む成果については原著論文として出版された。 二酸化ウランの水中への溶解を微生物が加速する現象の一つとして、微生物により産出されるキレート剤による溶解の促進効果がある。本実験では、キレート剤を産出する細菌であるBacillus sp.の培養液中に二酸化ウランを浸漬した時のウラン溶出量の経時的変化を調べた。その結果、微生物培養下では、二酸化ウラン表面の浸食状態から、溶解が加速するものと考えられるが、溶解したウランが微生物に吸着し、見かけ上の溶出量が低下することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物による二酸化ウラン溶解の加速効果について実験的に確認するとともに、実環境における二酸化ウランと微生物の相互作用として、チェルノブイリ石棺内の微生物や燃料デブリの経年変化に関する知見を得た。これらの知見を組み合わせ、発展させることにより、福島第一原子力発電所の炉内等の実際の環境下において、微生物が二酸化ウランの溶解に対してどの様な影響を与えるのかが明らかとなっていくものと期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
福島第一原子力発電所の炉内において、微生物が二酸化ウランの溶解に与える影響は、炉内に生息する微生物の種類に大きく依存する。我々は原子炉建屋内から採取された放射性汚染水からの微生物の分離を試みている。この微生物の特性を詳細に解き明かしていくことにより、微生物が二酸化ウランや燃料デブリの溶解、鉄等の構造材の腐食に与える影響が推定できると考えられる。このため今後は、微生物を分離した後、ゲノム解析による微生物種の同定や、鉄や二酸化ウラン等との反応実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度に実施した実験では、消耗品の在庫を有効活用して実施したため、次年度使用額が発生した。令和5年度は、使用した実験用消耗品等を補充する必要があり、かつ円滑な実験の実施のために十分な在庫を確保する必要があるため、次年度使用額は助成金と合わせてこれに用いる。
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