2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヤヌス型蛍光色素分子を用いた分子配列制御に基づくキラル空間の創成
Project/Area Number |
21K14615
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
上田 将史 北里大学, 理学部, 助教 (60778611)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クマリン / ベンゾクマリン / 三脚巴状分子 / ヤヌス型分子 / 蛍光性クマリン色素 / 凝集誘起発光 / 面外双極子 / キラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の「表面」と「裏面」を有するヤヌス型分子は,異なる電子構造に基づいた面外双極子によって,特異的な分子集積構造の構築に有用である.ヤヌス構造とキラリティーを組み合わせることで,分子配列の制御を可能とした円偏光ニ色性や円偏光発光などの物性発現が期待できる.分子の形状を活かした分子集積構造の緻密な制御および分子空間の創成を行うことで,高効率発光が可能なクマリン色素の開発を目指すために,クマリン類が三脚巴状に融合したヤヌス型蛍光色素分子を合成し,構造と光物性との相関について明らかにしていく. クマリンを三脚巴状に融合したプロペラ状分子(TriC)はお椀状の湾曲構造を有しており,分子の「表」と「裏」を有するヤヌス型分子であることをX線結晶構造解析から明らかにした.希釈溶液中では微弱な蛍光発光を示す一方で,THFと水の混合溶媒中では均一な凝集体を形成し,発光強度の大幅な増強(凝集誘起発光:AIE)が確認された.一般的なAIE色素とは異なり,分子反転による異性化を抑制することによって,効率的な輻射減衰過程へと誘導することができた.また,電子供与基を導入した系は,分子反転の抑制に起因したAIE特性の発現に加えて,クマリン骨格の光学特性に付随した吸収・発光波長の長波長化および量子収率の向上を示し,本系に対する化学修飾の有用性を実証することができた.さらに,ベンゾクマリン類([f], [g], [h])を三脚巴状骨格に組み込んだ誘導体は,ベンゾクマリン部位の縮合様式の違いが分子の厚み,ヘリシティ,分子軌道,分子集積構造に影響を及ぼし,異なる分子配列や光物理的性質を示した.π共役を拡張したこれらの系においても,TriCと同様に凝集体を形成させることができ,凝集体形成に伴う分子反転の抑制によって,発光強度を向上させることに成功した.
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