2021 Fiscal Year Research-status Report
抗がん活性分子の創製を目指したホモプシンの作用機序解析
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21K14629
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
保野 陽子 九州大学, 理学研究院, 助教 (40736500)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チューブリン重合 / 非天然型アミノ酸 / ペプチド / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホモプシンAは、ヒツジやウシ等の家畜の食中毒の原因物質として単離された、ペプチド系天然有機化合物である。その作用機序として、細胞有糸分裂に重要な役割を果たす、チューブリンの重合を強力に阻害することが報告されている。チューブリンの重合阻害を示す天然物は、抗がん剤あるいはその創薬リードとなっており、ホモプシンAも有望なリード天然物になりうると期待されている。一方で、最近見出された天然同族体のホモプシンFは、チューブリン重合を阻害しないのにも関わらず、抗がん活性を示す。本研究ではホモプシン類の真の活性発現機構の解明を目指し、全合成・構造活性相関・生物活性評価研究を実施する。 令和3年度はホモプシン類の全合成にむけて、環状セグメントの合成に取り組んだ。ホモプシンの環状部位は非天然型アミノ酸3種(3-ヒドロキシチロシン、3-ヒドロキシイソロイシン、2-メチル-3-アミノブタン酸)が連結した構造を有する。まずD-セリンを3段階かけてワインレブアミドへと変換した後、ジヒドロキシベンゼン誘導体とのカップリングを行うことで、3-ヒドロキシチロシン誘導体へと導いた。また別途、3-ヒドロキシイソロイシン等価体を、セリンから、立体選択的なアルキル化を含む9段階にて導いた。両者のアミノ酸をエーテル化での連結、保護基の除去および2-メチル-3-アミノブタン酸エステルとの縮合を経て環状部位前駆体を合成することができた。各アミノ酸フラグメントは5g以上のスケールで合成することができ、量的供給も可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然物の構成アミノ酸である3つの非天然型アミノ酸を、グラムスケールで合成することに成功した。さらに各アミノ酸の連結も効率的に進行した。これらの成果によって、天然物の全合成と量的供給に向けた基盤が構築できた。そのため研究はおおむね順調に推移していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホモプシンの環状部位を合成するため、前駆体の環化とN-メチル化を検討する。あわせて、構造活性相関として、ホモプシン側鎖部位の合成と抗がん活性評価を行う。天然物との活性の比較から、活性発現における側鎖部位の役割を調査する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が順調であったため、物品の購入が当初予定よりも抑えられた。次年度は試薬等の消耗品に加え、標的化合物の全合成をさらに推進するための分取用HPLCカラム等の購入を計画している。 また、学会発表がすべてオンラインで行われたため、旅費が予定より減少した。また参加できなかった学会もあるため、次年度は学会発表の機会を増やし、国際学会での発表等を計画している。
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Research Products
(22 results)