2022 Fiscal Year Research-status Report
核酸塩基の水素結合解析による冷結晶化メカニズムの解明
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21K14725
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
本田 暁紀 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (10812977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核酸塩基 / 冷結晶化 / 水素結合 / 蓄熱 / 赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルキル基を導入した低分子の示す冷結晶化について研究した。ここで冷結晶化とは、冷却時に過冷却液体やガラス状態になった分子を再加熱した際に、加熱過程で発熱を伴った結晶化が生じる現象を指す。過冷却状態の分子は固体と液体の間のエネルギー差(潜熱)を蓄熱した状態であるため、冷結晶化に関する研究は蓄熱材料の発展および省エネルギー社会の実現につながることが期待される。熱挙動は、示差走査熱量測定(DSC)および赤外分光法(FTIR)を主体として解析した。加えて、分子集合構造をX線構造解析によって明らかにし、熱変化に伴う分子の様子の変化は偏光顕微鏡観察の結果も含めて解析した。 核酸塩基として、アルキル置換したアデニンおよびチミン分子を用いた。温度制御ステージを用いて試料の温度を変化させつつ、赤外分光法によって分子間の水素結合の変化を観測した。アデニンとチミンを1:1で混合した試料を加熱した液体状態、冷却後の過冷却液体、再加熱後の冷結晶化固体、の各々について水素結合の状態を計測した。その結果、相補的な水素結合によるネットワーク構造が各状態で異なることが判明した。水素結合の多様性による系の不均一化によって結晶化速度が低下し、過冷却および冷結晶化が生じていることが分かった。その他、相補的な水素結合を形成するアデニンとウラシルの系についても、温度制御赤外分光計測を実施した。ウラシルの系については、結晶多形の影響も含めて熱挙動を考察した。加えて、核酸塩基以外の色素分子や金属錯体分子の冷結晶化についても研究を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外分光法による冷結晶化の解析において、高温液体・過冷却液体・冷結晶化固体における水素結合の状態を個別に解析することに成功したことによって、冷結晶化のメカニズム解明に係る考察が進展した。その温度制御赤外分光の成果について、学会にて口頭発表した。加えて、冷結晶化を示す低分子に関する研究成果について、論文発表を行った。また、冷結晶化を示さない核酸塩基の系についても赤外分光計測を実施しており、冷結晶化を示す系との水素結合の様子の差異などの考察も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
冷結晶化が発現するアデニンとチミン、アデニンとウラシルの混合系における、水素結合と冷結晶化の相関についての論文を投稿する。加えて、冷結晶化が発現しない系の水素結合についてより詳細に解析を行い、冷結晶化のメカニズム解明につなげる。相補的な水素結合を形成する系に関して、主に4種類存在する水素結合の組み方について、定量的な計測が実施できないか検討する。温度変化に伴う赤外スペクトル変化について、計測温度域をより細分化し、水素結合の多様性による系の不均一化と結晶化速度の相関について詳細に考察する。
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Research Products
(4 results)