2021 Fiscal Year Research-status Report
ポリアミンの抗肥満効果の検証とその作用メカニズムの解明
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21K14814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 恭平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員 (10867013)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポリアミン / 抗肥満 / インスリン |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリアミンは様々な食材に含まれる食品成分であるが、健康効果に関する報告は他の食品成分に比べると比較的少ない。本研究では、肥満は様々な疾患の発症ならびに老化反応の促進に関わることに着目し、ポリアミンの抗肥満効果について検証する。研究初年度における実験として、3種のポリアミン(プトレシン・スペルミジン・スペルミン)およびポリアミンの合成に用いられるプロリンが高脂肪食誘導性の肥満を改善するかを検討した。 高脂肪食の摂取により体重や脂肪重量は有意に増加した。ポリアミンおよびプロリンの飲水投与により、体重はわずかに減少したが、有意な変化は認められず、脂肪重量においても効果は認められなかった。しかしながら、経口グルコース負荷試験においては、高脂肪食群におけるグルコース投与後の血糖値の増加をプトレシン、スペルミジンおよびプロリン添加は有意に抑制した。同様の傾向がインスリン負荷試験においても観察されるかを検討したが、ポリアミンおよびプロリンの効果は認められなかった。血中パラメータの解析では、血中インスリン濃度は、高脂肪食により有意に増加したが、この増加はスペルミジン投与により抑制された。また、肝臓中総コレステロール含量はプトレシン添加群において、高脂肪食群と比較して減少する傾向を示した。 したがって、プトレシン、スペルミジンおよびプロリンは高脂肪食による血糖調節機能の障害を改善することが示された。また、スペルミジンはインスリン分泌機能を改善している可能性も示された他、プトレシンは肝臓脂質代謝を改善している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的として、ポリアミンの抗肥満効果の検証とそれに腸内細菌叢が関与するかの検証であった。前者においては、抗肥満効果は確認されなかったものの、プトレシン、スペルミジンおよびプロリンにより経口グルコース負荷試験の改善が認められた。これは、高脂肪食による負の効果を改善することを意味しているため、目的の一部は達成できたと考えられる。また、後者の目的に関しては直接的な検討は行えなかったものの、プトレシンおよびスペルミジンの投与により同様の効果を得た。プトレシンの小腸における吸収率は他のポリアミンに比べると低いため、プトレシンが腸内細菌叢によりスペルミジンに変換された可能性や腸内細菌叢の構成を変化させた可能性など、腸内細菌叢の関与を示唆している。したがって、後者の目的に関しても一部達成されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究としてまず行うのは、本研究の主目的である抗肥満効果の有無の再検討である。今年度の結果において、糖代謝に効果を持つ可能性が示されたため、高脂肪のみならず糖質も増やしたウエスタン食での実験を行うことを改善点の候補として考えている。また、インスリン分泌の関与も疑われたため、膵臓を用いた実験を行うことも計画している。 上記の実験において、抗肥満効果が認められれば、腸内細菌叢の関与を検討するため、糞便移植や抗生物質投与を行い、抗肥満効果がキャンセルされるか否かを検討する。
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Research Products
(7 results)