2022 Fiscal Year Research-status Report
野生イネを用いた環境変化による穂の形態形成の制御機構の理解
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21K14832
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
縣 歩美 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60875087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 野生イネ / 穂形態 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの収量性は、穂の枝分かれ(分枝)パターンを制御すれば向上できる。しかし、穂を改良したイネは環境変化に敏感であり、実環境において必ずしも期待した効果が発揮されない場合がある。この問題を解決するためには、穂の分枝パターンが環境に左右されないように、穂形態の環境応答を理解する必要がある。本研究では、野生イネが持つ環境適応性の多様性を利用して、穂が環境変化に応答しその形態を変化させ、日々変動する環境で生きていく適応機構を明らかにする。 本研究では、近縁野生イネが示す穂形態の環境ストレス応答を評価し、その応答性の多様性を明らかにすることを目指した。本年度は、昨年度確立した評価系において、近縁野生イネおよび野生イネ由来の穂の形態形成に影響を与える遺伝子座が導入されている染色体断片置換系統群を用いて、乾燥ストレスへの応答性を評価した。また、当初から計画していた乾燥ストレスに加えて、同じく世界的に喫緊の対応が求められている塩ストレスへの応答評価も行った。国立遺伝学研究所が保有する野生遺伝資源のうち18種から105系統を用いて、通常の水田と塩害水田で栽培を行った。全系統について生存率とSPAD値を調査し、一部の系統については草丈および茎葉重の調査を行った。その結果、塩ストレスへの応答に種間で顕著な違いが認められた。今後は、穂の分枝パターンの塩ストレスへの応答を調査していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度確立した評価系を用いて、予定通りの系統数の乾燥ストレス応答評価を実施することができた。加えて、塩ストレスへの応答評価にも着手することができた。環境ストレスに頑健性を示す系統の選抜に向けても、十分な結果を得つつある。以上を踏まえて、本研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実験結果から、近縁野生イネが種間で多様な塩ストレス応答を示すことが示唆された。2023年度は、各種における系統数を増やし、より多数の近縁野生イネを用いて、塩ストレスへの応答性を評価および分類する。乾燥および塩ストレスへの応答評価の結果から、それぞれのストレスに頑健性を示す系統の選抜を行う予定である。また当初の予定通り、分枝形成期の穂メリステムを用いたトランスクリプトーム解析を行い、穂の形態形成に関わり、かつ環境ストレスに応答する遺伝子群や遺伝子制御ネットワークの同定を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動もあり、当初計画していた発現解析を行う準備が整わなかったため、次年度使用額が生じた。これについては、2023年度に発現解析や遺伝解析を行うために必要な試薬類や設備を現所属で整えるための費用として使用することを予定している。
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Research Products
(2 results)