2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14856
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
深田 史美 岡山大学, 資源植物科学研究所, 特任助教 (80740414)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植物サイトカイン / イネ / RALF / 内因性ホルモン様ペプチド / イネいもち病菌 / 耐病性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は病原菌から身を守るために、病原菌を認識すると「植物サイトカイン」と呼ばれる内因性ホルモン様ペプチドを分泌して免疫応答を調節する。植物サイトカインの解析は未だ黎明期であり、最重要穀物であるイネにおいて植物サイトカイン-受容体ペアを同定した報告はまだない。本研究は、申請者らがイネにおいて新規に同定した植物サイトカインRALF7に着目し、その免疫機構を明らかにすることを目的としている。 当該年度はまず、RALF7ペプチドが誘導する一連の免疫応答を解析した。合成したRALF7ペプチドをイネの培養細胞に添加したところ、典型的なPTI反応として、活性酸素種の産生および防御応答遺伝子の発現上昇が認められた。またRALF7のノックアウトイネを作製し、重要病原糸状菌であるイネいもち病菌を接種したところ、本病原菌に対する抵抗性が減少した。このことはRALF7がPTI反応を誘導し、病原菌に対する抵抗性を強化する植物サイトカインである事を示している。 そこで、RALF7の受容体として単離されたDRUS1のノックアウトイネを取得し、DRUS1がRALF7の受容体として機能するかを解析した。野生株と比較してDRUS1ノックアウトイネの培養細胞では、RALF7ペプチドによって誘導される免疫反応が顕著に低下した。さらに、DRUS1ノックアウトイネでは病原菌への抵抗性が減少したことから、RALF7はDRUS1を正に制御することで抵抗性反応に関与する事が示された。 最後に、大規模なRNAseq解析によるRALF7ペプチド-DRUS1受容体ペアの下流因子の探索を行った。発現変動遺伝子の解析結果より、細胞壁構成成分の代謝経路に関与する遺伝子群および耐病性関連の遺伝子群がRALF7-DRUS1ペアにより制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは本研究課題の核となるRALF7ペプチドが誘導する一連の免疫応答を明らかにすることができた。さらに、免疫共沈降実験によりRALF7の受容体として単離されたDRUS1が、確かにRALF7により正に制御される受容体として機能する事を、分子遺伝学的手法により明らかにすることができた。 また当初の計画通り、RALF7の下流候補因子であるシグナル伝達および細胞内膜輸送関連遺伝子のノックアウトイネの作製を進めている。しかし一方で、イネ培養細胞にRALF7ペプチドを添加して行ったRNAseq解析では、実にイネの全遺伝子の25%にも相当する約1万もの遺伝子が発現変動していたことから、RALF7の下流候補因子をさらに絞り込むことが課題として考えられた。そこで、当該年度に実施したRNAseq解析により、「RALF7ペプチド添加により迅速に応答し」、「DRUS1受容体の下流で」、「植物体においても耐病性反応時に発現変動する」遺伝子群を絞り込むことに成功した。以上の事から、全体としておおむね順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に作製したシグナル伝達および細胞内膜輸送関連遺伝子のノックアウトイネを用いて、RALF7ペプチドとの関連性を解析し、免疫応答への関与を検討する。さらに、今回実施したRNAseq解析の結果より明らかとなった、細胞壁代謝や耐病性応答に関連する遺伝子に関して、RALF7ペプチドとその免疫応答への関与を明らかにする。さらに、RALF7ペプチドをイネいもち病菌およびイネ白葉病菌に添加し、植物サイトカインが植物病原菌の病原性発揮機構を攪乱する可能性について検討する。
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