2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K14896
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高木 悠花 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (10785281)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 浮遊性有孔虫 / 地球温暖化 / 環境適応 / 飼育実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表層に広く生息し,石灰化する動物プランクトンとして知られる浮遊性有孔虫には,藻類との共生関係(光共生)をもつ種がいる.浮遊性有孔虫の地質学的試料の解析からは,過去の急激な温暖化イベントに対し,光共生する種が選択的に生き延び,その後繁栄した可能性が指摘されており,光共生の温暖化適応戦略としての役割が想定されている.しかし,現生種を用いて検証された例はない.本研究では,現生浮遊性有孔虫の水温制御下での飼育実験,光合成測定,遺伝子解析を組み合わせ,どのようなメカニズムで光共生する浮遊性有孔虫が温暖化耐性を獲得しているかを明らかにすること目的とした. 令和3年度は,まず飼育実験用の試料を採取すべく,相模湾でのサンプリングを計5回計画したが,新型コロナウイルス感染症の影響や天候・海況の影響により,実際に実施できたのは3回であった.目的の光共生する浮遊性有孔虫種(Trilobatus sacculifer)は,当初計画の実験を行うには十分な個体数を得られなかったため,まずは予察的データを得るために,高温区(28度),低温区(18度)の2実験区で,飼育実験および毎日の光合成生理測定を実施した.実験の結果,高温区の個体のほうがよい成長を見せ,生存期間も長い傾向にあった.しかし,実験に供した個体数が限られていたうえ,実験開始数日でリプロダクションして死亡する個体もいたことから,継続的にデータを得られた個体数は各実験区数個となってしまった.統計的に解析できるようなデータセットにはなっていないが,次年度以降の実験遂行に役立つ有益な情報を得ることができた. また,本研究を着想するに至った光共生性浮遊性有孔虫の光合成に関する研究について,新たに論文としてとりまとめ,国際誌に受理・掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は,様々なコントロール不能な要因(感染症,天候,海況)によりサンプリングや実験自体は必ずしも順調に進んではいないが,当初計画から想定済みの範囲内である.予察的なデータを得ることはできていること,また関連研究も論文として発表できたことから,おおむね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,再度サンプリングおよび飼育実験を行うことに加え,継代培養している共生藻株についても,同様の条件で培養実験および光合成生理の解析を行う.また,過去に採取した様々な水温区からの個体についての共生藻組成の解析も行い,光共生性の浮遊性有孔虫の高温耐性メカニズムについて,多面的に検証していく予定である.
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Causes of Carryover |
前倒し請求が10万円単位だったため,実際に必要だった額35万円弱に対して,40万円を請求した.このために残額(次年度使用額)が約5万円生じている.したがって執行は計画通りである.
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Research Products
(5 results)