2023 Fiscal Year Research-status Report
中国における農業政策に関する実証研究-政策の変遷と農家経済に与える影響-
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21K14925
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
李 冠軍 高知大学, データサイエンスセンター, 特任助教 (10896963)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大豆生産者補助政策 / 中国 / 大豆生産 / 全要素生産性 / 選択型コンジョイント分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は2022年度の分析内容を引き続き推定・考察・改善を行った。概要は以下の2点である。 1点目は、2022年度に行った研究成果を学術論文として取りまとめた。具体的には、Multilateral生産性指数を用いて地域別大豆作の全要素生産性(TFP)を計測した上で、農業政策がTFPに与えた影響を分析した。分析結果として、主に以下の点が明らかとなった。①2004年~2020年にかけて大豆作TFPが変動しつつも上昇していることが分かった。計測期間後期では大豆TFPは向上する傾向にあるものの、大豆増産には生産要素の寄与率が顕著に高かった。これは大豆の生産者補助政策を実施することで、農家の生産意欲を高め、生産要素の投入に高い伸びがあったためであると考えられる。②非対象地域と政策の対象地域間のTFPは地域格差があったものの、計測期間後期では地域格差はほぼ解消した。③TFPに対する影響要因からみると、経営規模の拡大、水利整備の充実、災害面積の減少がTFPの上昇に貢献したことがわかった。一方で、大豆生産者補助政策の実施がTFPに及ぼす影響は認められなかった。
2点目は、これまでの先行研究では取り上げられていなかった中国の大豆生産者補助政策と農家の大豆生産意向との関係に焦点を当て、農家の大豆生産の導入・拡大の行動を分析した。具体的には、中国黒竜江省における自作地希望農家及び借地希望農家を対象として、補助金などの属性がどのように評価されるかを、選択型コンジョイント分析を通じて明らかにした。その結果、①自作地希望農家及び借地希望農家はどちらも大豆価格と補助金に対して正に有意な選好を示したこと、②大豆価格が低い水準である場合、補助金に対する農家の反応は敏感であること、③借地希望農家に着目すると、団地借地が大豆生産へ大きな誘因となること、の3点が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国の大豆生産者補助政策と農家の大豆生産意向との関係に焦点を当て、農家の大豆生産の導入・拡大の行動を分析した。この研究成果に関して、外部から意見を求め、それらを踏まえて課題設定や推計方法の修正・改善を行った。そのため、修正・改善に時間がかかり遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は以下のように研究を推進していく。 ①2024年度上期に論文投稿のための作業を行う。 ②2024年度下期にこれまでの研究成果を取りまとめ、研究成果報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は投稿が遅れが生じ、投稿料等の費用が未執行のためである。 2024年度に研究成果を取りまとめ学術雑誌に投稿予定であるため、投稿料・掲載料等が必要となる。
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