2021 Fiscal Year Research-status Report
無性芽形成を介したゼニゴケの栄養繁殖を制御する仕組みの解析
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21K15116
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小松 愛乃 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70824837)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 栄養繁殖 / 植物ホルモン / 苔類ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
葉や根、茎からクローン個体を作る「栄養繁殖」は旺盛な繁殖を可能にする。ゼニゴケの栄養繁殖では、成長の基本となる葉状体の表面に杯状体が形成され、杯状体内に形成される多数の無性芽がそれぞれクローン個体として成長する。無性芽は杯状体の底部に分化する無性芽始原細胞に由来するが、その細胞運命の決定や無性芽数の制御に関する分子レベルでの知見は乏しい。これまでにストリゴラクトン(SL)信号伝達の祖先型であるKL信号伝達系が無性芽形成を促進することを見出しており、KL信号伝達を介して無性芽形成が調節されていると考えた。そこで、本研究では、無性芽形成の初期過程の制御やKL信号伝達による制御を明らかにすることで、栄養繁殖の調節や進化を理解することを目的とする。令和3年度は、以下の2つの解析を行なった。 解析1.申請者が開発したKL信号伝達誘導系を用いたKL信号伝達の下流標的遺伝子群の単離 人為的にKL信号伝達を誘導できる実験系を用いてRNA-seq解析を実施した。KL信号伝達が誘導される条件と誘導されていない条件を比較することで、KL信号伝達依存的に発現変動する遺伝子群について情報を得た。また、KL信号伝達の誘導とともにタンパク質合成阻害剤による処理を行うことで、KL信号伝達系の直接の標的遺伝子群の選抜も行なった。 解析2.無性芽形成に関与するKL信号伝達系下流標的遺伝子群の単離 既に実施済みの無性芽形成部位における遺伝子発現解析の結果、解析1の結果、データベース等の情報を網羅的に探索した。KL信号伝達系は無性芽形成以外にも複数の形質を制御するため、解析1で選抜された下流標的遺伝子群から、無性芽形成を制御する標的遺伝子群を選抜した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に予定していた無性芽形成を制御する下流標的遺伝子群の単離が順調に進行したため、令和4年度に実施予定の標的遺伝子群の機能解析について既に着手できている。単離した遺伝子群のうち、一部の遺伝子について発現部位の解析を行うためのマーカー株の作出および機能欠損変異体の作出が完了している。無性芽形成への関与が示唆される遺伝子について、今後、より詳細な機能解析を行うことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年年度に得られた成果をもとに、下流標的遺伝子群について機能解析を進める。既に発現部位の解析を行うためのマーカー株の作出および機能欠損変異体の作出が完了している遺伝子については、発現部位の決定と機能欠損変異による表現型変化の解析を行い、無性芽形成への関与について明らかにする。また、そのほかの候補遺伝子について、発現部位の解析を行うためのマーカー株の作出および機能欠損変異体の作出も行う。さらに、無性芽形成への関与が示された遺伝子ついて、KL信号伝達遺伝子との多重変異体の作出、変異体における候補遺伝子の過剰発現等を行い、標的遺伝子がKL信号伝達の下流で作用することを検証する。KL信号伝達系による下流標的遺伝子の制御機構に関する知見を得るとともに、標的遺伝子群の環境応答についても解析し、無性芽形成を制御する環境情報に関する知見の獲得を目指す。
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