2022 Fiscal Year Research-status Report
ザゼンソウの発熱形質が遺伝的多様性に与える影響の解明
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21K15149
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
佐藤 光彦 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 特任研究員 (30783013)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 進化生態学 / 発熱植物 / 生態ニッチモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の発熱形質が寒冷適応に寄与した痕跡を現在の分布情報から検出するために、発熱するザゼンソウとほとんど発熱しないヒメザゼンソウを対象として、機械学習アルゴリズムに基づくMaxEntを用いた生態ニッチモデリングによって生育適地の推定を実施した。多重共線性が強く見られる変数を除いた5つの環境変数を用いることで高い精度で現在の生育適地を推定し、分布の決定に最も寄与する環境要因が両種とも冬期の降水量が重要であることを明らかにした。発熱するザゼンソウでは冬期の降水量が多いほど生育確率が上昇し、ほとんど発熱しないヒメザゼンソウでは一定の降水量以上では生育確率が上昇することなく、頭打ちとなった。さらに2種の間で見られた生育適地の分布の詳細な比較と統計的な差異の解析を行った。予測されたモデルから生育適地の広さを定量したところ、現在よりも寒い最終氷期から現在よりも温かい間氷期、現在と時代が進むにつれて、発熱するザゼンソウでは生育適地が狭くなる傾向、ほとんど発熱しないヒメザゼンソウはおおよそ生育適地が維持されていた。いっぽうで、最終氷期から間氷期にかけて、ヒメザゼンソウの方がより生育適地の重なりが少なかった。日本各地のザゼンソウ、ヒメザゼンソウに対して次世代シーケンサーを用いた葉緑体のrbcLとpsbA-trnH領域の配列決定と、核のSNP情報をゲノムワイドに得られるMIG-seq法を実施した。葉緑体、核ともに発熱するザゼンソウでより遺伝的多様性が高いことが示された。ザゼンソウの地点とサンプル数を追加してRAD-seqを実施した。これによってより多くのSNPを得ることができた。このゲノム上の位置を特定するためのリファレンスとして、ザゼンソウのゲノムシーケンスおよびアセンブルを実施し、ほぼ全長のゲノムを決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの成果を第24回日本進化学会にて発表できた。論文も国際誌へ投稿中であり、現在改訂を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿中の論文の掲載へ向けて改訂を進める。また、決定したゲノム配列に対して遺伝子領域の推定と機能の予測を行い、RAD-seqとリシーケンスによって種内および種間で比較を行う。発熱種と非発熱種でどのような領域に遺伝的多様性に差があるか、自然選択の痕跡が見られるかを検出する。
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Causes of Carryover |
国際誌へ投稿しオープンアクセスとするために必要な額を確保していたが、昨年度中には受理、支払いが確定しなかった。当該年度にそのまま投稿料として使用する。
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Research Products
(4 results)