2022 Fiscal Year Research-status Report
ニーマン・ピック病C型の臨床課題を克服する次世代型コレステロール輸送療法の構築
Project/Area Number |
21K15316
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山田 侑世 宮崎大学, 医学部, 薬剤師 (90898107)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニーマン・ピック病C型 / ライソゾーム病 / シクロデキストリン / コレステロール / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニーマン・ピック病C型(NPC)は、リソソーム内にコレステロールなどの脂質が異常蓄積することで、重篤かつ進行性の中枢神経・肝障害を呈する先天性の稀少難病である。現在、コレステロール輸送能を持つシクロデキストリン(CD)誘導体である2-ヒドロキシプロピル-β-CD(HPβCD)を治療薬候補とした治験が展開されているが、効果の頭打ちや聴覚障害といった課題を抱えている。本研究では、これらの課題を克服する次世代型コレステロール輸送担体の創出に向けた検討を行う。
2022年度は、NPCに病態改善効果を示し、かつ、聴覚毒性を回避するCD誘導体の構造特性を検討した。齧歯類および患児由来のNPC病態モデル細胞および、マウス蝸牛由来の外有毛細胞前駆細胞を用いることで、新規CD誘導体ライブラリーから、細胞内コレステロール動態を改善するとともに聴覚細胞毒性の低い誘導体を抽出した。次に、抽出したCD誘導体とコレステロールとの分子間相互作用をin vitroおよびin silico解析によって評価し、有効性発現および細胞毒性発現のそれぞれに寄与するCD-コレステロールの包接様式を特徴づけた。これら細胞毒性発現への寄与率の低い包接様式を示したCD誘導体を、Npc1遺伝子欠損マウスに脳室内投与すると、劇的な延命効果および運動機能の改善を示した一方で、残念ながらすべてで難聴が誘発された。しかし、興味深いことに、NPCに対する病態改善効果を持たないネガティブコントロールとして用いたCD誘導体は、コレステロールと複合体を形成せず、聴覚毒性も示さなかった。これらの結果を統合することで、聴覚毒性を回避し得るCD誘導体の構造を起案し、新たな誘導体を構築したところ、実際にマウスに対する脳室内投与時の聴覚毒性は、臨床開発中のHPβCDより顕著に低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特許出願済みのCD誘導体について、HPβCDと比較し末梢投与では聴覚毒性が極めて低いことを報告した(Yamada et al, Biomed. Pharmacother., 2022)。さらに、新規CD誘導体ライブラリーより抽出された複数の治療薬候補についての知見を国際学術誌に投稿中である。昨年度予定していた細胞処理に必要な機器の導入が、半導体の世界的な供給不足により滞っていたが、2023年度5月に設置完了し、予定していた研究計画を進めていることから、概ね順調に進捗していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を基盤に構築した聴覚毒性を回避し得る新たなCD誘導体について、想定される聴覚毒性の回避機構および臨床応用可能性について詳細に検討するとともに、NPC治療に最適な構造特性を推定する。
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Causes of Carryover |
細胞処理に必要な機器が半導体の供給不足で購入できなかったため、2023年度にその購入費用として充てる予定である。
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[Journal Article] Fine-tuned cholesterol solubilizer, mono-6-O-α-D-maltosyl-γ-cyclodextrin, ameliorates experimental Niemann?Pick disease type C without hearing loss2022
Author(s)
Yamada Y, Miwa T, Nakashima M, Shirakawa A, Ishii A, Namba N, Kondo Y, Takeo T, Nakagata N, Motoyama K, Higashi T, Arima H, Kurauchi Y, Seki T, Katsuki H, Okada Y, Ichikawa A, Higaki K, Hayashi K, Minami K, Yoshikawa N, Ikeda R, Ishikawa Y, Kajii T, Tachii K, Takeda H, Orita Y, Matsuo M, Irie T, Ishitsuka Y
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Journal Title
Biomedicine & Pharmacotherapy
Volume: 155
Pages: 113698~113698
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 化学量論に基づいたシクロデキストリンの shuttle - sink機能制御によるニーマン・ピック病C型治療の最適化2023
Author(s)
山田 侑世, 西澤 まど香, 西山 麻美, 石井 亮良, 河田 達哉, 白川 愛奈, 中島 将貴, 近藤 悠希, 竹尾 透, 中潟 直己, 三輪 徹, 竹田 大樹, 折田 頼尚, 東 大志, 本山 敬一, 有馬 英俊, 関 貴弘, 倉内 祐樹, 香月 博志, 檜垣 克美, 南 謙太朗, 吉川 直樹, 池田 龍二, 松尾 宗明, 入江 徹美, 石塚 洋一
Organizer
日本薬学会第143年会
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[Presentation] 新規 Niemann-Pick 病 C 型治療薬候補マルトシル-γ-シクロデキストリンの 聴覚毒性評価2022
Author(s)
田中 万祐子, 山田 侑世, 坂井 太一, 白川 愛奈, 近藤 悠希, 本山 敬一, 東 大志, 有馬 英俊, 倉内 祐樹, 関 貴弘, 香月 博志, 岡田 安代, 檜垣 克美, 池田 龍二, 三輪 徹, 竹田 大樹, 折田 頼尚, 松尾 宗明, 入江 徹美, 石塚 洋一
Organizer
フォーラム2022 衛生薬学・環境トキシコロジー
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