2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒト膵管上皮細胞におけるKRAS遺伝子変異による代謝変化が惹起する癌化機構の解明
Project/Area Number |
21K15368
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 辰典 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40882890)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌の多段階発癌過程では初期のKRAS遺伝子変異がほぼ必発であるが、その変異が起きた後、どのような生物学的変化が生じて、どのように他の遺伝子の変異が蓄積されて癌化するのか、その後の明確な分子機構は分かっていない。申請者はこれまで、KRAS遺伝子変異がグルタミン・アスパラギン酸などの特定の細胞内のアミノ酸を枯渇させることを報告してきた。いっぽう近年の報告では、高血糖などの代謝異常が遺伝子変異を誘発すると言われている。すなわち、代謝異常も遺伝子変異の原因となりうる。そこで、本申請では、KRAS変異が導入された膵管上皮細胞で惹起されるグルタミン・アスパラギン酸の枯渇がプリン・ピリミジンプールのインバランスを惹起し、その他のドライバー遺伝子の変異を続発的に誘発するのではないか、すなわち「遺伝子変異が惹起する代謝リプログラミングによる細胞癌化機構」というコンセプトを検証することをとしている。本年度は、、不死化したヒト正常膵管上皮細胞にCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いてKRAS遺伝子に変異を導入し、遺伝子発現変化や代謝変化をはじめとするKRAS変異が惹起する表現型を検討した。その結果、プロリンの枯渇やグルタミンの変化などが同定されている。KRAS変異を導入した、ヒトの正常膵管上皮細胞を解析することで膵発癌の初期過程を解明する研究を進めることが一番の特色である。本年度は、これらの変化をin vitroで検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「KRAS遺伝子変異が膵癌を惹起する分子機構は何か」という根源的な問 癌細胞が引き起こす代謝リプログラミングに関しては多くの知見が得られつつある。急速に増殖する癌細胞は代謝リプログラミングを行い、増加した代謝上の要求を満たすことが知られ、膵癌においてもグルコース代謝やグルタミン代謝が変化することが知られているため、代謝リプログラミングからの遺伝子変異惹起の観点で検討を続けている。特に「特定の遺伝子変異がもたらす代謝変化が更なる遺伝子変異をもたらし、多段階発癌を促進する可能性」については十分に検討されているとは言えず、そのような経路が同定できれば「代謝変化による遺伝子変異の蓄積」という独自のコンセプトを提唱しうるとともに、膵癌研究分野だけでなく、KRAS変異が初期に起こる大腸癌や肺癌などの癌分野の病態生理解明の一端にブレークスルーをもたらす可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
癌細胞が引き起こす代謝リプログラミングに関しては多くの知見が得られつつある。急速に増殖する癌細胞は代謝リプログラミングを行い、増加した代謝上の要求を満たすことが知られ、膵癌においてもグルコース代謝やグルタミン代謝が変化することが知られている。そこで本研究では、KRAS変異を導入した、ヒトの正常膵管上皮細胞を解析することで膵発癌の初期過程を解明する研究を進めることが一番の特色である。特に「特定の遺伝子変異がもたらす代謝変化が更なる遺伝子変異をもたらし、多段階発癌を促進する可能性」については十分に検討されているとは言えず、そのような経路が同定できれば「代謝変化による遺伝子変異の蓄積」という独自のコンセプトを提唱しうるとともに、膵癌研究分野だけでなく、KRAS変異が初期に起こる大腸癌や肺癌などの癌分野の病態生理解明の一端に役立てていきたい。
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