蚊の唾液による自然免疫応答と蚊媒介性ウイルス感染制御機構の解明

2022 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21K15451
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 鈴木 達也 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (10837272)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: フラビウイルス / 自然免疫 / 蚊 / 唾液

Outline of Annual Research Achievements

日本脳炎ウイルスやデングウイルスといった蚊媒介性フラビウイルスは、ベクターである蚊の吸血の際にヒトに感染する。これらのウイルスは、吸血時にウイルスと共に接種される「唾液」の作用により惹起される様々な反応により、効率的に感染し、病原性が発揮されると考えられているが、その詳細な機序は不明瞭である。そこで本研究では、蚊の唾液の感染増強作用の解析を通して、フラビウイルスの病原性緩和に向けた新規の予防・治療薬の開発に繋げることを目的とした。
蚊の唾液が感染局所に与える影響を検討するため、日本脳炎ウイルスを媒介するアカイエカから採取した唾液腺抽出物を用いてフラビウイルス感染マウスモデルによる検討を行なった。RNAシーケンスによる感染局所の網羅的遺伝子発現解析とマスサイトメトリーによる免疫細胞動態解析などから、蚊の唾液刺激によって誘導される自然免疫応答、中でも好中球を中心とした炎症反応がウイルスの病原性増強に重要であることを明らかにした。その一方で、唾液腺抽出物の単回投与では惹起されるアレルギー応答が微弱であることが示唆された。さらに、日本脳炎ウイルスとアレルギー反応を惹起するヒスタミンを同時にマウスに感染させても、唾液腺抽出物で認められるような感染の増強は引き起こされなかったことから、蚊の唾液による病原性増強において、アレルギー応答の関与が少ないことが示唆された。さらに、ウイルス感染時にある種の抗炎症薬を感染局所に同時に接種することで、唾液腺抽出物によるウイルスの病原性増強が抑制されることを示した。以上の結果から、唾液によって誘導される反応を阻害することでウイルスの病原性を抑制できる可能性が示唆された。