2021 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌の発育進展におけるミトコンドリア代謝に注目した革新的治療の開発
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21K15515
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
恩田 真二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10459620)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オートファジー / ミトコンドリア代謝 / ライソゾーム酵素 / 酸性βグルコシダーゼ / 肝細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝炎などの肝臓の炎症を基盤として発症することが特徴であり、それぞれに固有なまたは共通した発癌や進展のメカニズムが存在する。ランダムな遺伝子変異の蓄積と合わせて肝細胞癌の多様性につながっていると考えられており、肝細胞癌の発生および進展における分子生物学的機構の解明は課題である。進行・低分化肝細胞癌においては、乏しい栄養血管にも関わらず腫瘍の発育・浸潤転移がみられ、何らかの自己エネルギー供給機構を有している可能性が示唆されている。我々は、そのエネルギー供給のメカニズムとして、細胞内オルガネラのリサイクル機構であるオートファジーに注目し、その最終段階であるミトコンドリア代謝に注目した。癌細胞はオートファジーによって異常な高分子を分解することによって細胞内環境を維持し、細胞死から逃れている。そのためオートファジーを阻害することで抗がん剤耐性の改善が見込める可能性がある。オートファジーの最終段階はライソゾームに依存した分解系であり、特定のライソゾーム酵素を選択的に阻害することにより、オートファジーの分解不全を誘導し、抗がん剤の効果を高める方法を着想した。本研究では酸性βグルコシダーゼ(GBA)による糖脂質代謝ネットワークを解析し、抗がん剤耐性の原因を明らかにするとともに、肝細胞癌治療における基礎的知見を提供する。また、いまだに解明されていない抗がん剤投与下のGBAの機能を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行実験として、肝細胞癌細胞株(Huh-7、Hep3B)を用いて主要なライソゾーム酵素のうち、ひとつをノックダウンすることで、肝細胞癌細胞株の増殖抑制効果を確認した。 また、膵癌細胞株を用いた予備実験では、ライソゾーム酵素のひとつであるGBA酵素活性とタンパク質発現量の評価を行った。膵癌細胞株と正常膵管細胞に関してGBA酵素活性を測定し、癌細胞株間での酵素活性の相違が、GBA蛋白発現量との相関を示した。またsiRNA法を用いてGBAをノックダウンしたところ、GBA酵素活性と蛋白発現量が有意に減少し、GBAをノックダウンしたことにより、もとのGBA酵素活性の大きさにかかわらず、細胞増殖抑制効果を認め、同時にアポトーシス細胞の増加、アポトーシスシグナルの増強を認めた。 神経細胞においてはGBAの遺伝子変異によりミトコンドリア障害を認めることが報告されているため、膵癌細胞株においてGBAノックダウンにより、各細胞株で膨化したミトコンドリアの蓄積が確認され、蛍光顕微鏡下でのミトコンドリアの蓄積と、ライソゾーム活性の低下も確認された。続いて、蓄積したミトコンドリア機能を評価するために、細胞内の活性酸素種(ROS)を評価したところ、フローサイトメトリーでの細胞内ROSの蓄積が確認された。ミトコンドリア内においてもROSの蓄積が確認され、ミトコンドリアの機能不全を示唆する結果であった。実際のミトコンドリア機能障害を評価する目的でミトコンドリア膜電位をフローサイトメトリーの間接的な測定を行ったところ、膜電位の低下を認め、GBAノックダウンで細胞内に蓄積したミトコンドリアは、膜電位が低下した不良ミトコンドリアであることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの膵癌細胞株による実験で、膵癌細胞株においてGBAノックダウンにより不良ミトコンドリアが蓄積されることが明らかとなっており、肝細胞癌株においても同様であることを実験で確認する。さらに不良ミトコンドリア蓄積の原因検索のために、ミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジー機構を検索する。方法は、蛍光顕微鏡により蛍光色素を用いてマイトファジーを評価し、その蛍光をフローサイトメトリーで定量化し、GBAノックダウンにおけるマイトファジーの評価を行う。また、オートファジー関連タンパク質であるLC3とp62の発現量をウエスタンブロッティング法で評価する。次にマイトファジーのアポトーシス誘導との関わりを検討する。GBAノックダウンによるアポトーシス誘導はマイトファジーが必要であるかを検討するために、マイトファジー阻害剤を用いることにより、阻害剤単独で用いた際と比較して、GBAノックダウンとの組み合わせが、アポトーシス細胞を誘導するのかを検討する。さらにマイトファジーの阻害が、GBAノックダウン後の不良ミトコンドリアのクリアランスをブロックするかを検出する。その検出が可能であれば、ライソゾーム酵素と抗がん剤耐性の関与に関して、肝細胞癌に対する分子標的治療薬であるレンバチニブの投与下で、薬剤の濃度依存的にライソゾーム酵素活性を測定する。ライソゾーム酵素をノックダウンした肝細胞癌細胞において、薬剤の細胞増殖能抑制効果がさらに増量することを確認する。
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[Journal Article] The significance of the rapid turnover protein score as a predictor of the long-term outcomes in hepatocellular carcinoma after hepatic resection2021
Author(s)
Yanagaki M, Haruki K, Yasuda J, Furukawa K, Onda S, Tsunematsu M, Shirai Y, Gocho T, Taniai T, Hamura R, Ikegami T
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Journal Title
Ann Surg Oncol
Volume: 28
Pages: 8130-8139
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research