2021 Fiscal Year Research-status Report
アロマターゼ阻害剤耐性再発乳癌に対するエストロゲン療法のバイオマーカー開発
Project/Area Number |
21K15571
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 瞳美 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70795541)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / シングルセル解析 / アロマターゼ阻害剤耐性 / エストロゲン療法 / エストロゲン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ER陽性乳癌であるGS3(エストロゲン(E2)抑制モデル)とSC31(E2増殖モデル)のシングルセルデータを比較解析することで、ER陽性閉経後乳癌、AI耐性症例に対するエストロゲン療法有効群を特定するバイオマーカーの開発を目的とする。GS3/SC31のプラセボ/E2治療後、4サンプルから分離したシングルセルをシークエンスし、得られたデータをRソフトウェアとSeuratパッケージを使用して解析した。 E2は、SC31/GS3双方でエストロゲン応答遺伝子の発現を誘導した。しかし、E2はSC31で細胞周期を促進し、GS3では抑制した。また、E2治療後、SC31でイントーフェロンα/γ応答遺伝子発現が減少し、SC31/GS3双方でTNFA/NFκB関連遺伝子発現が減少した。これらの遺伝子発現変化は、同じ腫瘍内のESR1+/ESR1-両細胞で見られ、ESR1-細胞に対するエストロゲンの効果を初めて示した。E2はGS3のみで腫瘍抑制遺伝子IL24を誘導し、間欠的E2治療によりGS3がエストロゲン非依存性を獲得した後は、IL24発現レベルが低下した。E2治療後のIL24+細胞では、アポトーシス関連遺伝子発現が増加し、腫瘍増殖関連遺伝子発現が低下した。以上より、エストロゲンはER+乳癌対し、異なる反応(腫瘍増殖/抑制)を誘導し、ESR1+/ESR1-両細胞に影響を及ぼした。本研究では、IL24の発現が、E2療法適応患者の選択および治療効果予測のバイオマーカーになる可能性を示唆した。 この研究成果は、2021年12月8日に米国テキサス州で開催された第44回San Antonio Breast Cancer Symposium スポットライト・ポスターディスカッション(PD1-04)で発表した。また、この論文はCancer誌に掲載された(2021, 13(24), 6375)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シングルセル解析を1年目に完了し、国際学会発表、論文発表まで完遂したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、患者組織を使ったspatial transcriptomics解析を計画している。シングルセル解析では個々の細胞のシークエンスを行うことが可能であるが、組織から分離する際に死細胞が出てしまうため、100%組織全体の評価できているわけではない。spatial transcriptomicsの技術を用いれば、スライドにある組織上の個々のスポットの遺伝子発現を解析することが可能である。乳癌のようなheterogeneityがある組織上で遺伝子発現の違いや分布を解析し、シングルセルデータと比較することで、エストロゲンがER陽性乳癌で腫瘍退縮を引き起こすメカニズムがより明確になると考える。
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Causes of Carryover |
本年は、コンピューターソフトを用いた解析が主な内容であったため、予定よりも研究費の使用が少なかったため。次年度はSpatial transcriptomics解析に使用予定である。
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