2021 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム発現遺伝子に着目した肝癌の新規診断および治療法の開発
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21K15599
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
志田 隆史 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 助教 (10883267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リボソーム / rRNA / スプライシング / 腫瘍診断 / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌や希少疾患などにおけるリボソームの構成タンパク質の種類や数,組成などについては基礎的な研究報告がみられるが,臨床検体を用いた研究はほとんど行われていない.本研究の着想に至った経緯は,転写やスプライシングに関与するタンパク質(FIRやFIRΔexon2)と相互作用するタンパク質群にリボソームRNA,スプライシング因子(hnRNPs),mRNA結合タンパク質が多いことなど関連する論文を調査して着想に至った.近年,疾患における診断や治療標的となるバイオマーカー探索は世界中で競争が激しい.一方,リボソームタンパク質に注目したバイオマーカーはほとんど報告されていない.その理由は質量分析による詳細な検討が最近まで行われてこなかったことが一因である.さらには,臨床検体を用いたリボソームタンパク質などのRNAの転写後調節に関わるタンパク質は数百におよび解析が困難であった.しかし,近年の質量分析技術やNGS等の遺伝子解析技術の急速な進歩により,これまで難しかった網羅的な遺伝子およびタンパク質の発現解析が可能となった.本研究は転写,スプライシング因子として同定されたFIR(Far-upstream element-binding protein-interacting repressor)(別名PUF60)が,多数のリボソームタンパク質の遺伝子rDNAおよびrRNAを同時に発現調節していることを明らかにし,癌の新規診断および治療法の開発をすることである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FIR(別名PUF60)が,多数のリボソームタンパク質の遺伝子rRNAを発現調節している基礎的データを得た.さらに,FIRΔexon2を選択的に阻害する分子化合物(BK697)はリボソームタンパク調節に影響を及ぼすデータを得た.
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Strategy for Future Research Activity |
課題 1. FIRやFIRΔexon2の新規機能・ターゲット遺伝子の同定をする. 現在は細胞株1種類における検討であったが,複数の肝癌細胞株を用いて,遺伝子導入やsiRNAによりFIRおよびFIRΔexon2を発現変化させて,多数のリボソームタンパク質の遺伝子rRNAから特定する.タンパク質生合成に重要なリボソームを構成するリボソームRNAの代謝は正常細胞と比較して癌細胞では亢進しているといわれ,リボソームRNAの変化を見ることは診断補助や治療薬開発につながる可能性がある.
課題 2. FIRΔexon2を選択的に阻害する分子化合物の影響の予測をする. 複数の肝癌細胞株を用いて添加実験を行う.本研究では、細胞の種類を増やして,BK697のリボソームへの影響と細胞増殖抑制の機序を詳細に検討する.それにより、c-Myc依存的あるいは非依存的に数十種類のリボソームタンパク質と相互作用し,がん細胞の増殖阻害に役立つリボソームDNAの転写など,副作用の少ない効率的な分子標的の同定に役立つと考える.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で,学会参加のための旅費を使用しなかったため.
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