2023 Fiscal Year Research-status Report
リボソーム発現遺伝子に着目した肝癌の新規診断および治療法の開発
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21K15599
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
志田 隆史 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10883267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | rRNA / FIR / RPB6 / TFIIH /P62 |
Outline of Annual Research Achievements |
c-myc遺伝子転写抑制因子FIR(Far-upstream element-binding protein-interacting repressor)、別名PUF60がc-myc遺伝子の発現を増大させる機序として、FIRの転写抑制部位のエクソン2を欠損したスプライシング変異(FIRΔexon2)が発現し、ドミナントネガティブ効果によりc-myc遺伝子の転写が活性化されていることが明らかになっている。
近年、リボソームの構成タンパク質が癌細胞や希少疾患の細胞では正常細胞と異なることが報告されており、FIRおよびFIRΔexon2も多くのリボソームタンパク質の発現(rRNAやRPレベル)に影響を与えていることがRNA-Seqによる検討で示唆されている。このことから、FIRおよびFIRΔexon2は癌におけるリボソームの不均一性に関与していると考えられる。
癌や希少疾患におけるリボソームタンパク質の構成や発現量、組み合わせの変化、さらにはリボソームタンパク質の遺伝子変異などが報告されているが、臨床検体における詳細は不明な点が多い。本研究では、肝細胞がん株を用いて、リボソームタンパク質をmRNAおよびタンパク質レベルで検出する系を構築し、詳細な検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の一部は論文化に至っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、FIRΔexon2によるTFIIH/P62を介したがん関連mRNAおよびrRNA転写の新規共活性化経路を提唱した。 具体的には、FIRはP62と相互作用するRPB6と相同な領域を含んでいることが示唆された。また、FIRΔexon2はFIRとP62の結合を競合し、mRNAとrRNAの転写を共活性化した。さらに、FIRおよびFIRΔexon2に結合する低分子化合物をがん治療のためにスクリーニングして得られた低分子化合物BK697は、rRNAの抑制を伴って腫瘍細胞の増殖を抑制した。 今後、P62-RBP6相互作用に影響するFIRとFIRΔexon2の構造的な違いを示すためには、X線結晶構造解析による直接的な証拠が必要である。
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Causes of Carryover |
残額が少額のため、次年度の高額物品に充てている。 次年度は計画的に必要物品として購入予定である。
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