2021 Fiscal Year Research-status Report
個人の脳領域間の結合性を反映したニューラルネットワークによる自閉症認知特性の再現
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21K15723
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 雄太 東北大学, 大学病院, 助教 (40894225)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 計算論的精神医学 / 人工ニューラルネットワーク / 自閉スペクトラム障害 / 感情認識 / 予測符号化理論 / 機能的結合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、頭部MRIデータベースを用いて、各被験者の脳領域間の結合性パターンを一対一対応させた人工ニューラルネットワークを用意する。そして、オリジナルの被験者の自閉症的な認知特性と、対応する人工ニューラルネットワークにおける認知特性が類似することを確認する。さらに、人工ニューラルネットワークにおける神経活動を調べることで、脳領域間の結合性変化が自閉症症状を引き起こすメカニズムを検討する。 初年度は、頭部MRIデータベースとして、Autism Brain Imaging Data Exchange (ABIDE)データを入手した。脳領域間の結合性については、このデータベースにおける機能的結合性指標を用いることとした。被験者の機能的結合性の分布に人工ニューラルネットワークのパラメータを対応させる方法について検討した。そして、人工ニューラルネットワークに表情から感情を認識する課題のシミュレーションを行い、感情という高次情報を抽出する能力、感情認識を汎化させる能力について評価した。人工ニューラルネットワークで観察される自閉症的な認知特性の背景には、機能的結合性に対応するパラメータ間の相互作用が関わっていることがわかった。人工ニューラルネットワークの神経活動を観察することで、このパラメータの相互作用を引き起こすメカニズムとして、内部モデルと知覚情報への依存度のバランスと、知覚情報の予測の汎化能が複雑に影響しあっていることがわかった。そして、人工ニューラルネットワークで自閉症的な認知傾向を示す場合には、対応する被験者でも自閉スぺクラム障害の診断がなされている傾向が示された。これにより、人工ニューラルネットワークで観察されたパラメータ間の相互作用や自閉症的な認知傾向は、頭部MRIデータベースによって生物学的な妥当性が検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頭部MRIデータベースの準備、計算機の用意といった研究の環境整備はすでに終了し、人工ニューラルネットワークを用いたシミュレーションを開始し、パラメータの相互作用に関する知見を見出すことに成功した。さらに、人工ニューラルネットワークと被験者を対応させる方法についても確立を行い、人工ニューラルネットワークによるシミュレーションの結果を被験者の頭部MRIデータで検証することにも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
人工ニューラルネットワークのシミュレーションを被験者に対してマッピングする方法について検討する。全体の結果をまとめて論文や学会で発表し、広く外部の研究者から意見を集める。今回は頭部MRIのデータのみであったが、今後は、ゲノム等の他のモダリティのデータを統合することで、より包括的に病態を説明できるようなモデルを作成する。
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Causes of Carryover |
スーパーコンピューターの使用経費やバイオバンクの契約金は各年度ごとに支払う必要があり、次年度にも支払う必要があるから。
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Research Products
(4 results)