2022 Fiscal Year Research-status Report
ニューロモデュレーションによる強迫性障害の病態解明のための基礎研究
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21K15751
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中島 明日香 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40812459)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強迫性障害 / 脳深部刺激療法 / 恐怖条件づけ / 大脳基底核回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は強迫行為モデルラットを用いて強迫行為の評価および単一神経細胞活動の記録・解析をおこなう予定であった。しかし、前年度の実験の進捗状況を鑑みて正常ラットによる高頻度刺激下での強迫観念に対する評価を行なった。 正常ラットに定位脳手術的手法を用いて、脳への刺激用電極挿入のためのチャンバーを設置し、恐怖文脈条件づけ課題を施行した。課題の施行中にラットの視床下核(STN)に刺激用電極を用いて高頻度刺激(130Hz, 60μs, 0.9-1.0mA, 15sec)をおこなった群(n=7)とコントロール群 (n=7)にわけ高頻度刺激の恐怖反応の影響を評価した。 STN-DBS群では3匹、コントロール群では4匹に行動実験後の恐怖行動の改善を認めたが、両群間での改善度に統計学的な有意差は認められなかった(Wilcoxon signed rank test)。 この恐怖反応の変化は既にOCDの強迫観念に関する評価方法として用いられている。先行研究では分界条床核(BNST)群での高頻度刺激ではコントロール群と比較して強迫行動の改善を認めているが本研究でのSTN刺激による改善は認められなかった。近年では神経心理学的研究や脳画像研究からOCDの病態生理のひとつとして大脳基底核を主軸としたOCDループ仮説が提唱されている。OCD-DBSではループ仮説に関与する、腹側線条体、BNST、側座核、STNが刺激ターゲットとして用いられている。いずれの刺激部位でもOCD症状の改善を認めているが、OCDループに対してDBSが電気生理学的にどのような作用を及ぼしているのか、どのターゲットでの刺激が最も症状を改善させるかは明確にはされていない。今回の結果からはOCDに対するSTN-DBSでは刺激する大脳半球の左右差による効果発現の違いや、STN-DBSによる臨床効果はBNST-DBSより劣る可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度も行動実験に必要な資材の納品がcovid-19感染症やウクライナ情勢の影響により遅れたため実験の開始が遅れてしまった。そのため、年度内での実験の完了は難しく次年度も引き続き行っていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定ではBNSTにも刺激電極を挿入し、STN-DBS群、BNST-DBS群、コントロール群の間で行動実験を評価する予定であった。また、今年度はラットにドパミンD2受容体アゴニストであるquinpirole(QNP)を投与し、OCDの強迫行為のpreclinicalなモデルラットとしてQNPモデルラットおよび正常ラットを用いてSTNまたはBNSTの高頻度刺激を行いながら下流に位置するEntopeduncluar Nucleus (EP)に単一細胞外記録を行い応答の変化を評価する予定である。この研究により、脳内バイオマーカーと成り得るような異常な神経細胞活動の同定や神経伝達物質を明らかにすることを目的とする。
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Causes of Carryover |
実験の進捗状況から実験期間を1年延長したため次年度使用額が生じている。次年度では前年度の行動実験の継続とラットにドパミンD2受容体アゴニストであるquinpirole(QNP)を投与し、強迫性障害の強迫行為のpreclinicalなモデルラットとしてQNPモデルラットおよび正常ラットを用いて視床下核または分界条床核の高頻度刺激を行いながら下流に位置するEntopeduncluar Nucleusに単一細胞外記録を行い応答の変化を評価する予定である。
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