2021 Fiscal Year Research-status Report
新規モデルマウスによる神経発達症のエピゲノム変化の解明
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21K15888
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
久松 大介 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任研究員 (20880272)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム解析 / エピジェネティック制御 / 神経新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、発生期の神経幹・前駆細胞(NSPC)のニューロンサブタイプ分化能に重要な役割を持つ転写因子の一つとしてPHF21Bを見出している。この因子の類似遺伝子であるPHF21Aは、自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症の責任因子のひとつとして知られているが、神経発達障害におけるPHF21Bの役割は不明である。また、この因子はその構造からエピジェネティック修飾に関与することが予想される。そこで、本研究では通常よりも迅速に行える方法により、Phf21bの遺伝子改変マウスを作製し、エピゲノム制御の観点から発症機構に関与するか否かを明らかにする。 本年度はi-GONAD法(improved-Genome editing via Oviductal Acids Delivery)によるPhf21bのノックアウトマウスの作製に必要な技術および設備を実施施設である順天堂大学に整えた。当初の予定では、全身性ノックアウトマウスの解析を実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により動物実験が困難になったため、これまで実施していた胎仔期におけるマウスPhf21b遺伝子の詳細な解析を進めた。具体的には、Phf21bを含むニューロンサブタイプ分化能に影響を与えることが予想される3因子を、胎仔期の大脳皮質で過剰発現および機能阻害を実施し、遺伝子導入された細胞の網羅的な遺伝子発現解析を実施した。このトランスクリプトーム解析により、過剰発現することで神経新生に関与する遺伝子の発現上昇、および大脳皮質の層特異的遺伝子の発現変動が起こっていることが明らかになった。さらに、過剰発現および機能阻害により転写や翻訳に関与する遺伝子発現が変動しており、Phf21bによるエピジェネティックな転写制御機構が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、i-GONAD法による遺伝子改変マウスの作製は研究協力者のいる慶應義塾大学医学部生理学教室で実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により実施が困難になったため、順天堂大学医学部の動物実験施設内に実験設備を整備することになり、時間を要している。また、申請者は順天堂大学のCOVID-19チームとして新型コロナウイルス感染症の研究に従事することになったこともあり、動物実験が大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は新型コロナウイルス感染症により実施困難だったi-GONAD法によるPhf21bの全身性ノックアウトマウスの解析を実施する。胎仔期(E18.5)および新生仔(P7)における表現型の解析を行う。評価項目としては、脳の大きさや海馬の萎縮度、神経新生ならびに線条体におけるGABA作動性ニューロンや中脳ドーパミンニューロン、大脳皮質の層特異的ニューロンの局在などをマーカー遺伝子を指標に調べる。また、動物実験と並行してマウスES細胞を用いて、Phf21bのエピジェネティック制御機構を調べる。具体的には、Phf21bの遺伝子座にTy1タグをノックインしたPhf21bノックインES細胞を作製し、Chipシーケンスにより結合部位を明らかにする。 一方で、全身性のノックアウトマウスの解析のほか、今年度に進めた胎仔期での大脳皮質におけるPhf21bの詳細な役割を明らかにするため、胎仔期の大脳皮質で過剰発現させた遺伝子改変細胞の一細胞トランスクリプトーム解析を実施することで、高解像度にPhf21bの転写制御あるいは翻訳制御機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により動物実験が困難であったため、動物実験にかかる費用が次年度に繰り越された。この繰越金を含め、動物実験、およびその後のトランスクリプトーム解析およびATAC-seqとChip-seqによるエピゲノム制御機能を明らかにする実験に使用する。
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Research Products
(3 results)