2021 Fiscal Year Research-status Report
膵癌における糖脂質代謝異常と発癌メカニズム、癌の進展に注目した革新的治療法の開発
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21K16390
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
安田 淳吾 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90896870)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Lysosome酵素 / ミトコンドリア / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓癌患者は年々増加しており、医療技術の進歩にかかわらずその予後は依然として不良である。またその悪性度の高さにより診断時に手術可能な症例は全体の10-20%にとどまっており、化学療法の進歩により予後の改善が望まれている。膵臓癌は乏血性の腫瘍であり、血管新生が乏しいことが知られている。膵臓癌では低酸素、低栄養環境下で増殖可能なようにオートファジーが亢進し、栄養が供給されることが特徴であり、膵臓癌におけるオートファジー機構は癌治療における有望な標的である。癌細胞はオートファジーによって異常な高分子を分解することによって細胞内環境を維持し、細胞死から逃れている。そのためオートファジーを阻害することで抗がん剤耐性の改善が見込める可能性がある。オートファジーの最終段階はLysosomeに依存した分解系であり、特定のLysosome酵素を選択的に阻害することにより、オートファジーの分解不全を誘導し、抗がん剤の効果を高める方法を着想した。本研究では酸性βグルコシダーゼ(GBA)による糖脂質代謝ネットワークを解析し、抗がん剤耐性の原因を明らかにするとともに、膵癌治療における基礎的知見を提供する。また、いまだに解明されていない抗がん剤投与下のGBAの機能を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずGBA酵素活性とタンパク質発現量の評価を行った。膵臓癌細胞株と正常膵管細胞に関してGBA酵素活性を測定し、癌細胞株間での酵素活性の相違が、GBA蛋白発現量との相関を示した。またsiRNA法を用いてGBAをノックダウンしたところ、GBA酵素活性と蛋白発現量が有意に減少したことを確認した。また、GBAをノックダウンしたことにより、もともとのGBA酵素活性の大きさにかかわらず、細胞増殖抑制効果を認め、同時にアポトーシス細胞の増加、アポトーシスシグナルの増強を認めた。 神経細胞においてはGBAの遺伝子変異によりミトコンドリア障害を認めることが報告されているため、膵癌株においてGBAノックダウンによる形態学的評価を行った。GBAノックダウンにより、各細胞株で膨化したミトコンドリアの蓄積が確認され、蛍光顕微鏡下でのミトコンドリアの蓄積と、ライソソーム活性の低下も確認された。 続いて、蓄積したミトコンドリアの機能を評価するために、細胞内の活性酸素種(ROS)を評価したところ、フローサイトメトリーでの細胞内ROSの蓄積が確認された。ミトコンドリア内においてもROSの蓄積が確認され、ミトコンドリアの機能不全を示唆する結果であった。実際のミトコンドリア機能障害を評価する目的でミトコンドリア膜電位をフローサイトメトリーの間接的な測定を行ったところ、膜電位の低下を認め、GBAノックダウンで細胞内に蓄積したミトコンドリアは、膜電位が低下した不良ミトコンドリアであることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで、GBAノックダウンにより不良ミトコンドリアが蓄積されることが明らかとなっており、さらに不良ミトコンドリアの蓄積の原因を評価することを検討している。具体的に、ミトコンドリアの選択的オートファジーであるマイトファジー機構を検索する。方法として、蛍光顕微鏡により蛍光色素を用いてマイトファジーを評価し、その蛍光をフローサイトメトリーで定量化し、GBAノックダウンにおけるマイトファジーの評価を行う予定である。また、オートファジー関連タンパク質であるLC3とp62の発現量をウエスタンブロッティング法で評価する。 次にマイトファジーのアポトーシス誘導との関わりを検討する予定である。GBAノックダウンによるアポトーシス誘導はマイトファジーが必要であるかを検討するために、マイトファジー阻害剤を用いることにより、阻害剤単独で用いた際と比較して、GBAノックダウンとの組み合わせが、アポトーシス細胞を誘導するのかを検討する予定としている。さらにマイトファジーの阻害が、GBAノックダウン後の不良ミトコンドリアのクリアランスをブロックするかを検出する。その検出が可能であれば、ライソゾーム酵素と抗がん剤耐性の関与に関して、ライソゾーム酵素活性低下と抗がん剤による細胞増殖能抑制効果を評価し、中期的にはGBA酵素活性への依存度が高い膵癌を標的として研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
学会発表が重なり、当初予定していた学会出席数より多くなったため
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Research Products
(10 results)