2021 Fiscal Year Research-status Report
抗原提示性癌関連線維芽細胞が腫瘍免疫に及ぼす影響の解析と大腸癌免疫治療への応用
Project/Area Number |
21K16428
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
笠島 裕明 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10899678)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 線維芽細胞 / 大腸癌 / 免疫療法 / 抗原提示細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「癌オルガノイド を用いた浸潤・肝転移大腸癌モデルでの検討から、apCAFによる腫瘍免疫応答調節を介した癌免疫療法治療抵抗性メカニズムの解明及び大腸癌新規治療法の開発に寄与すること」であり、まず研究実施計画(3)-1. ヒト大腸癌間質組織におけるapCAF発現の臨床病理学的意義に関する検討を行なった。ヒト遺伝子発現情報データベースを用いた大腸癌の解析により、癌間質部分から分離培養された線維芽細胞においてapCAFマーカーは正常部に比較し上昇しており、肝転移巣ではさらに上昇していることが確認されたことから、ヒト大腸癌組織標本を用いて、apCAFマーカーによる免疫組織学的染色を行い、癌間質細胞におけるapCAFマーカー発現と大腸癌患者の予後との関連を解析し、癌間質細胞陽性症例において陰性症例と比較し有意に無再発生存期間が不良であることを明らかにした。さらに線維芽細胞マーカーとapCAFマーカーの蛍光二重染色により大腸癌間質にapCAFマーカー陽性線維芽細胞が同定され、Stage IIに比較しStage IIIでより高率に陽性症例が認められた。これらの結果は線維芽細胞における抗原提示能が腫瘍免疫及び腫瘍進展に関与していることを示唆しており、癌細胞―間質線維芽細胞相互作用がapCAFを介して腫瘍免疫を制御している可能性が考えられる。現在、研究実施計画3)-2. 大腸癌浸潤・転移モデルを用いた癌微小環境におけるapCAFの同定及び機能解析に着手しており、大腸癌オルガノイドを用いた同所移植モデルを作成済みである。今後apCAFマーカーを用いた局在の解析や抽出及び機能解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画(3)-1. ヒト大腸癌間質組織におけるapCAF発現の臨床病理学的意義に関する検討は順調に進捗しており、今後(3)-2. 大腸癌浸潤・転移モデルを用いた癌微小環境におけるapCAFの同定及び機能解析へ進む予定である。大腸癌浸潤・転移モデルに関しては当研究室においてプロトコール確立済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画(3)-2. 大腸癌浸潤・転移モデルを用いた癌微小環境における抗原提示性癌関連線維芽細胞 (apCAF) の同定及び機能解析を行う。大腸癌オルガノイド直腸同所移植により得られた直腸局所腫瘍と肝転移巣腫瘍からフローサイトメトリーを用いてCAFを抽出し、apCAFマーカーの発現をフローサイトメトリーおよびqRT-PCRにて評価する予定であるが、直腸同所移植による肝転移が困難である場合は盲腸同所移植への変更を検討する。さらに線維芽細胞の抽出効率が不良である場合はPdpnやS100a4などの線維芽細胞特異的マーカーによる抽出を考慮する。また臨床検体を用いての検討も同時に行う予定である。 さらに(3)-3. 大腸癌免疫療法が及ぼすapCAFへの分化及び局在の検討については、大腸癌オルガノイド直腸同所移植マウスモデルにおけるチェックポイント阻害剤の使用が及ぼすapCAFの分化への影響を解析する。さらに、抗PD-L1抗体に加えて、TGFbeta阻害剤の併用療法を比較検討することにより、線維芽細胞の活性化に関与するTGFbetaシグナリングの阻害が及ぼすapCAFへの分化及び局在に対する影響を解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は当研究室に保有している検体を用いた解析が多かったため物品費が予定より少なかったが、来年度より培養実験や動物実験に取り掛かる予定であり費用がより多くかかる見込みであるため。
|