2022 Fiscal Year Annual Research Report
フェロトーシス感受性を制御するがん代謝の解明とそれを応用した新規化学療法の確立
Project/Area Number |
21K16484
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山田 直也 自治医科大学, 医学部, 研究員 (50611787)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フェロトーシス / がん代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞の代謝機構には正常細胞と異なる点が多くあるが、その中でも好気的条件下における乳酸産生(Warburg効果)は最も有名である。肝癌由来細胞株Huh-7において、解糖系からTCAサイクルへ誘導するForced OXPHOS (強制的酸化的リン酸化)と呼ばれる無グルコース・ガラクトース添加培地を用いた際に、フェロトーシス感受性が亢進し、少量のブチオニンスルホキシミン(BSO)でフェロトーシスを誘導できることが明らかになった。既存の薬剤のうちで、上記の培地条件と同様の代謝変化をもたらすものとして、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤であるジクロロ酢酸ナトリウム(DCA)を見出した。 RNA-Seqでは、DCAの添加によって複数のアミノ酸トランスポーターの遺伝子発現上昇を伴い、アミノ酸欠乏様の遺伝子発現変化を認めた。メタボロミクスでは、細胞内アミノ酸濃度の全般的な上昇を認めた。 DCAの投与によって小胞体ストレスシグナル経路の1つであるPERK、ATF4、CHAC1のmRNA及びタンパクレベルでの発現上昇を認め、DCA+BSOによってもたらされるフェロトーシスはPERK、ATF4、CHAC1の欠損細胞で抑制され、小胞体ストレスシグナルを介することが示された。 DCAによるフェロトーシス増強はSKHep1やHLEなどの低分化・未分化肝癌細胞株でも認められた。また、DCAによるフェロトーシス感受性増強は、BSO以外にxCT阻害剤であるErastinでも認められたのに対し、GPX4阻害剤であるRSL-3では誘導効果はなく、細胞内GSH濃度と密接に関係することが示唆された。
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