2021 Fiscal Year Research-status Report
Efficacy of Inhaled Nitric Oxide under VV-ECMO for ARDS
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21K16525
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
森 彰平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30648100)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一酸化窒素吸入 / VV-ECMO / ARDS / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
ARDSに対するVV-ECMOによる肺保護戦略は人工呼吸器による肺へのダメージを回避し、自己の肺修復を待つ治療であり、積極的に肺の修復を促すわけではない。予後改善のための更なる治療の開発が求められている中で、NO吸入がARDSにおけるVV-ECMOの肺保護戦略に上乗せして肺血流の増加作用や血栓形成抑制作用、好中球の接着抑制作用、代謝産物であるNO2-による細胞保護作用予防により、肺組織の修復・正常化を促進させる可能性があると考え、本研究を計画した。2021年度は、学会参加をして討論を行い動物実験において体外循環回路や一酸化窒素の吸入投与が循環動態に与える影響の学術的背景を調査しつつ、並行して一酸化窒素吸入投与のための回路構築を行った。回路の構築を様々なパターンを試した結果、ラットへの人工呼吸器・ガス麻酔回路に一酸化窒素ガスと濃度測定器を組み込み、濃度をモニタリングしながら投与することが可能となった。一酸化窒素10~20ppmでの安定した供給・投与が可能となった。今後はこの回路を基に本実験を進めていく。また、本研究の基礎となるラットの急性肺障害モデルにおける体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)の循環動態に及ぼす影響と血液ガスの酸素化・脱二酸化炭素化への影響を調べるために動物実験を行った。この研究結果は2022年5月に開催される第39回日本呼吸器外科学会学術集会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年1月に研究者の異動があったため、研究環境を整えるまで、計画していた実験を予定通り進めることができない期間があった。そのため、進行が予定より遅れる結果となってしまった。また、本研究に必須となる一酸化窒素濃度測定器が世界的な半導体不足により発注から入手まで数ヶ月の期間を要したことも遅れる原因となった。一方で、その期間には、本研究の背景となる他の基礎的研究データの収集を行い、動物実験においてはECMOが循環動態に及ぼす影響と血液ガスの酸素化・脱二酸化炭素化への影響を調べるための動物実験を行っていた。2022年度からは、すでに一酸化窒素測定器が入手でき、回路構築をはじめとした研究環境も再調整できたため、本実験を計画通り進めていくことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針に関しては、ラットの急性肺障害モデルを用いて、ECMO+/-、一酸化窒素投与+/-の組み合わせを用いて、1) 通常換気 2) 通常換気+NO吸入 (20 ppm) 3) VV-ECMO下の肺保護換気 4) VV-ECMO下の肺保護換気+NO吸入 (20ppm)の4群で各群N=10として均等に実験を進めていく。アウトカムは生体測定:呼吸サポート中の血圧、SpO2、血液ガス分析 組織学的評価:組織学的肺障害スコア、肺胞上皮細胞のアポトーシスの頻度、微小血栓形成の程度、血液生化学:血中MetHb濃度、炎症性サイトカイン測定(IL-1β, IL-6, IL-8, TNF-α)肺組織RT-PCR: platelet activating factor, protease-activated receptor (PAR-1), PAR-2, PAI-I, t-PA, 肺表面活性物質アポ蛋白遺伝子SP-A、SP-B、のmRNAの発現量定量とする。これらの比較・解析を行いARDSに対するVV-ECMO環境下におけるNO吸入療法の治療効果と生体に与える影響を検討する。研究結果は、国内・国外の外科・呼吸器関連の学会、及び論文での発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
主な原因としては、研究者の異動があったため、研究環境の調整を行うことが必要となり、予定していた計画に遅延がでたことによる。回路構築や予備実験としての動物実験は行えたものの、機材の入手遅れにより本実験の開始に進めなかったことが原因である。一方で機材の購入に関しては物品費を要した。今後の使用計画としては、使用する実験動物のラットや体外回路・膜型人工肺を購入するため、物品費を利用する。また、今後も研究成果の発表や学会参加の上の討論を必要とし、旅費を利用する予定である。
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