2021 Fiscal Year Research-status Report
脳動脈瘤病態を形作る慢性炎症環境の成立要件としての脳血管内皮細胞間バリア機能破綻
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21K16622
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
栢原 智道 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (10895478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤 / 慢性炎症 / 血管内皮細胞間結合 / 内弾性板 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、脳動脈瘤の各病態形成時期における血管内皮細胞間結合の形態学的あるいは機能的な変化、およびマクロファージの脳血管壁への浸潤様式について脳動脈瘤モデルラットを用いて検討する。そして、慢性炎症疾患としての脳動脈瘤においてどのように内皮細胞間バリアが破綻し炎症の場が形成されるのかを解明することを目的とする。 令和3年度は、まず電子顕微鏡撮影用のラット脳血管標本の作製法につき検討した。灌流・固定から超薄切までの手法を確立し、血管内皮細胞間結合や内弾性板といったバリア機能に関係する微細構造が観察できることを確認した。引き続き、脳動脈瘤モデルラットを用いて病変部および正常脳血管のバリア機能に関する微細構造の検証を継続中である。 また、脳動脈瘤の破裂時期におけるマクロファージの浸潤様式の検討のため、マクロファージの遊走因子の機能抑制を試みた。細胞実験では、遊走因子のドミナントネガティブ変異体が遊走因子の機能を抑制することを示した。現在、ラットに脳動脈瘤を誘導したのちドミナントネガティブ変異体をラットの血液中に発現させる手法を検討中である。 一方、脳動脈瘤の有病率が高いことが疫学的に明確に示されている常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎を発症するPkd1欠損ラットを樹立し、in vivoでの内皮細胞間バリア機能低下モデルとしての採用を検討していた。しかし、CRISPR/Cas9系によるPkd1欠損ラットの系統樹立を2度試みたものの、ラットにおいてはヘテロ個体も胎生死となるため断念した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微小な組織であるラット脳血管の電子顕微鏡撮影用標本作製にあたり、灌流・固定や包埋の方法など作製手法の確立に時間を要した。また、Pkd1欠損ラットが樹立できず、それを用いた実験計画の中止を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に実施した研究の継続に加えて、脳動脈瘤の発生増大過程における内弾性板の断裂様式の検証を行う。脳動脈瘤モデルラットを用い、電子顕微鏡観察にて内弾性板の断裂開始部位を特定する。また、内弾性板断裂への関与が示唆される酵素の発現状況や局在につき検証する。
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Causes of Carryover |
電子顕微鏡を用いた実験計画の遅延や、Pkd1欠損ラットが樹立できなかったこともあり、当初計画より余剰が生じた。令和4年度の電子顕微鏡撮影にかかる物品費等に充当する。
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