2021 Fiscal Year Research-status Report
網膜前増殖組織の牽引力の差異を生む分子生物学的背景の解明
Project/Area Number |
21K16872
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
的場 亮 岡山大学, 大学病院, 助教 (90894551)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黄斑前膜 / 網膜牽引 / 光干渉断層計 / α平滑筋アクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
黄斑前膜、黄斑偽円孔、分層黄斑円孔などの黄斑部疾患において、網膜の表面側(=網膜前)に膜状の増殖書式を認める。この網膜前増殖組織が網膜を病的に牽引するが、その牽引の程度が疾患や症例によって大きく異なることが知られている。牽引力の見極めが手術適応を決める上で重要であり、申請者らは光干渉断層計en face画像を用いて網膜皺襞を可視化し、その深さの最大値(=最大網膜皺襞深度)を測定することで、網膜への牽引力の強さを客観的に定量評価できることを提唱した。しかし、どのような分子生物学的機序によって症例や疾患による網膜の牽引力の違いが生じるのかについては不明である。そこで、各種黄斑疾患について最大網膜皺襞深度から網膜牽引力を定量し、手術時に採取した網膜前増殖組織のタンパクや遺伝子発現を調べることで、牽引力の差異を生む分子生物学的背景を調べることを目的として、研究を行っている。 具体的には、黄斑疾患に対する手術症例において、手術前後の最大網膜皺襞深度を測定した。そして、手術中に網膜前増殖組織を採取し、免疫染色やRT-PCRによりタンパクおよび遺伝子発現解析を行った。手始めにα平滑筋アクチンについて検討し、免疫染色により高牽引力症例で強いタンパク発現があることが確認できた。RT-PCRについては、微量検体からRNAを抽出し、遺伝子発現を解析する手法の確率を目指して予備実験を行った。その結果、安定してRT-PCRの結果を得るための手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、臨床検体の採取に関して、黄斑前膜については症例数が多く、十分量の検体が採取できており、今後も継続できる見込みである。しかし、黄斑偽円孔、分層黄斑円孔は手術症例が想定以上に少なく、十分な数の検体が採取できていない。各種黄斑疾患の病態解明のためにはそれぞれの疾患における検体の解析が必要であるため、進捗としてはやや遅れていると言える。 また、検体の解析について、RT-PCRにより定量的に遺伝子発現を解析することを試みた。しかし、採取できる検体が微量であることから、最適な検体の保存方法、RNAの抽出処理方法を見出すための予備実験に想定よりも多くの時間と検体数を要した。したがって、この点からもやや進捗が遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体の採取に関しては、コロナ禍が落ち着きつつあるという社会的な背景もあり、今後手術症例数の増加が見込まれるため、継続して各種黄斑疾患の検体採取を行っていく。 検体の解析方法については、安定してRT-PCRの結果を得ることができる最適な手法を確率したため、今後は目的とする遺伝子発現解析を進めて行き、臨床的に推定される牽引力の強さとの関連性を検証していく。
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Causes of Carryover |
臨床検体採取数が想定より少なかったことにより、想定より実験を行った回数が少なく、実験関連費用の支払いが少なかった。また、コロナ禍により現地開催の学会が行われておらず、学会参加のための旅費を使用しなかった。 今後は検体数の増加により実験回数が増え、実験関連費用が増えることが想定される。また、現地開催の学会が増えてきており、参加費の支出の増加が見込まれる。
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Research Products
(1 results)