2022 Fiscal Year Research-status Report
Cnm陽性S. mutansの全ゲノム配列に基づく新規治療法の開発
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21K16944
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
齊藤 聡 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (40732996)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳卒中 / う蝕 / 治療 / 微小出血 / 脳出血 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳微小出血は脳卒中患者の長期予後に影響を及ぼす。コラーゲン結合蛋白Cnmを発現するStreptococcus mutansは、脳血管の炎症を誘発し、血液脳関門の完全性を損ない、脳出血の原因となる。これまでCnm陽性S. mutansと脳深部の微小出血の関係が示されてきたが、脳表の微小出血との関連は示されてこなかった。脳表の微小出血は、脳深部の微小出血に比して、より密接に認知症と関連する。本研究では、Cnm陽性S. mutansと脳微小出血、特に脳表の微小出血との関連について検討した。 本研究では、Cnm陽性またはCnm陰性のS. mutansの保菌をPCRで評価した。Cnm陽性S. mutansと脳微小出血の数、特に10個以上の脳微小出血の存在との関連を検討した。多変量解析では、脳微小出血に関連する、年齢、性別、高血圧、脳卒中の病型、NIHSSスコア、脳アミロイド血管症で調整した。 本研究では、326人のS.mutans保菌患者を対象とした。画像データのない4名の患者を除外し、72人のCnm陽性S. mutans保菌患者と250人のCnm陰性のS. mutans保菌患者で比較した。Cnm陽性S. mutansの保菌は、10個以上の脳微小出血の存在と関連し (調整後オッズ比: 2.20 [1.18-4.10])、深部微小出血および脳表微小出血の数と独立して関連していた(調整後リスク比, 深部微小出血: 1.61 [1.14-2.27], 脳表微小出血: 5.14 [2.78-9.51])。以上の研究より、口腔内のCnm陽性S. mutansが脳深部の微小出血のみならず、脳表の微小出血とも関連することが世界で示された。また、口腔内のCnm陽性S. mutansを減少させることが、脳卒中や認知症の新しい治療法/予防法として有用である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果が、本年度European Journal of Neurology (IF:6.288)に掲載された。そのため概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Cnm陽性S. mutansと微小出血の関連について、現在遂行中の多施設共同前向き観察研究で評価するとともに、そのメカニズムについて基礎研究で検討する。また、現在歯磨き粉を用いたCnm陽性S. mutansの治療の可能性について検討中である。治験のデザインのための基盤データつまり、Cnm陽性S. mutans保菌患者の自然歴は、現在遂行中の多施設共同前向き観察研究から2023年度中に明らかになる。COVID-19の感染も収束し、いよいよ海外との共同研究も可能となる。2023年度は治療薬開発に向け、臨床試験のプロトコール作成にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究に関連する論文(Harboring Cnm-expressing Streptococcus mutans in the oral cavity relates to both deep and lobar cerebral microbleeds. European Journal of Neurology)の審査に、予想以上の日数を要した (初稿投稿日:2022年4月26日、論文採択日:2023年1月26日)。この間、私たちの論文改訂作業は2ヶ月程度であり、大部分が査読の期間であった。またCOVID-19が原因の海外渡航制限は2022年度も研究の遂行に大きな影響を与えた。そのため、この論文の次の研究を遂行するのに大きな障害が生じた。したがって、2023年度に繰り越した。
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