2021 Fiscal Year Research-status Report
Pg感染が腸管dysbiosisを通じて糖尿病の病態に与える影響の解明
Project/Area Number |
21K16968
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
芥川 桂一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 専門研究員 (40826369)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Porphyromonas gingival / セグメント細菌 / フコース / 糖尿病 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周炎は歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(Pg)をはじめとした口腔内細菌による感染症である。また、歯周組織では細菌感染によって微小構造が破壊され炎症が引き起こされる事で、局所の血管が拡張し細菌が血中に侵入する菌血症の病態を呈する(Support Care Cancer. 2013)。さらに、これまでの研究から腸内細菌の変化が全身疾患に影響することが報告されている。本研究では、近年着目されているPg感染が糖尿病(DM)の病態憎悪に影響するメカニズムを、腸管の免疫応答に着目して解析する。Pg感染が腸管上皮細胞および常在リンパ球系に与える影響と、その結果引き起こされるdysbiosisが糖尿病に影響を与えるのではないかと考え、Pg-DMマウスを使用してPgのセグメント細菌と Th17細胞および腸管のdysbiosisを介すると考えられる常在自然リンパ球系への影響を評価する事で、Pg口腔感染が糖尿病の病態に与える影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、本年度は、モデルマウスの確立、解析方法の確立に関して、重点的に研究を進めた。Pg口腔内塗布を週2回、計6週間行うことで歯槽骨吸収が引き起こされること、歯周組織及び血清中の炎症性サイトカインIL-6が上昇することを確認した。またマウス糞便中の腸内細菌叢の解析を行い、コントロールとPg塗布群で相違があることを確認した。更に腸管粘膜の組織的観察から、Pg投与によりパイエル板の肥厚が認められた。以上のことから計画は順調に進行しており、次年度は糖尿病マウスにおいて、上記のPg塗布実験を行い、解析を行う予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、動物モデルの確立とその解析方法が確立できた。具体的には、歯周組織の炎症の評価、組織学的評価、腸管粘膜の炎症の評価、組織学的評価、腸内細菌叢の評価に付いて、方法を確立した。糖尿病マウス、及び、歯周炎、糖尿病併発マウスに関しては、投与する餌、投与期間などの検討項目が多岐にわたるため、前倒しして検討を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画としては、計画1として、腸管内の自然リンパ球の局在、性状の検討(a.組織中の自然リンパ球(CD90陽性 class3 ILC3)の分布を組織学的に検討する。また、組織をコラゲナーゼ処理し、細胞を回収し、ILC1-3、Th1、2、17の細胞数の変化をフローサイトメトリーで検討する。b.ILC3が産生するIL-22の産生量をELISA、BioPlex(BioRad)を用いた網羅的手法で検討する。また、その他のTh1、2、17が産生するTNF-α、IFN-γ、IL-4、IL-12、IL-17についても産生量を検討する。c.ILC3と腸管上皮細胞の相互作用について、transwel systemを用いてin vitroで再現し、Pg特異的にIL-22産生が抑制されること、Fut2産生が抑制されること、フコースが分解されることを突き止める。特にPgの病原因子欠失株で相互作用を検討する。)。計画2として抗菌薬、FMTがDMマウスの病態microbiota改善に与える効果の検討(臨床で抗菌薬、さらに、健常マウス由来糞便をマウス腸管に糞便移植(fecal microbiota transplantation、肛門からカテーテルを挿入し、小腸中央部へ注入する)することによるDM症状、腸管microbiotaをメタゲノム解析、デジタルPCRで検討する。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた、動物実験で購入予定であったマウスに関して、自施設での繁殖が順調に進んだため、追加購入する必要がなかった。次年度に、実験を円滑に遂行するために、次年度使用額はマウスの追加購入費用に使用予定とする。
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