2022 Fiscal Year Research-status Report
HuRとRANKL陽性Th17細胞に着目した歯周病と多発性硬化症の関連機序の解明
Project/Area Number |
21K16970
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宗永 修一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 専門研究員 (20825327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周炎 / Porphyromonas gingivalis / 多発性硬化症(MS) / 抗MOG抗体関連疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
確立したPg口腔投与MSモデルマウスを使用した。モデルマウスの具体的な作成方法として、まずC57BL/6マウスの9~11週齢の雌に、MOG35-55/CFA Emulsion (Hook Kit) を皮下投与する。それに加えて、実験開始日とその翌日に百日咳毒素(PTX)を腹腔内投与することでMS症状を誘導する。Pg口腔投与群として2% carboxymethyl cellulose (CMC)含有PBS 50μl中にPg W83 を108 CFUを懸濁後、綿球に含ませ3日おきに口腔内に留置する。実験開始28日後に屠殺し解析を行うと、Pg投与群はPg非投与群と比較し、MS症状を示すClinical scoreが有意に高値を示した。また、Pg投与群では歯周組織でのHuRの産生量、および血清中のIL-6産生量がPg非投与群と比較し有意に増加していた。Pg投与群と非投与群それぞれから血清を採取し、破骨細胞分化に及ぼす影響を検討したところ、Pg投与群の血清添加群では破骨細胞分化の促進を認めた。 臨床例として、MS類似疾患である抗MOG抗体関連疾患患者において複数歯に歯根吸収を認める症例をケースレポートとして報告した。抗MOG抗体関連疾患とMSの臨床像は少し異なるが、ともに自己免疫性の中枢性炎症性脱髄疾患であり、病態や免疫異常の背景に多くの共通点がある。臨床例で同様の歯根吸収を生じていないか検討を試みた。しかし、抗MOG抗体関連疾患は非常に稀な疾患であり、現時点では十分な対象疾患患者に出会えていない。動物実験として、作成したPg口腔投与MSモデルマウスや絹糸結紮MSモデルマウスを使用し、Pg投与菌数や飼育期間などの条件を検討しながら異常歯根吸収などの有無を解析したが、MSモデルマウスに明らかな異常歯根吸収を起こす結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リンパ節や脾臓におけるT細胞分画、特にRANKL陽性Th17細胞について検討するために、Pg投与群と非投与群の2群から採取し比較検討したが、解析した範囲では有意な差は認められなかった。そのため、解析に精通している破骨細胞分化に与える影響を検討する実験を追加で行った。予期していない結果となり実験計画が変更となり、当初は予定していなかった実験を追加で行ったため、実験計画がやや遅れてしまう結果になった。
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Strategy for Future Research Activity |
Pg投与によりMS症状が増悪したマウスの血清は、MS症状が増悪しなかったマウスやPg非投与群の血清よりも破骨細胞分化を促進させる結果を得た。血清中のいずれの因子が、破骨細胞分化促進に関与したか検討するために、解析手法に精通しているC5aを含めた補体因子や細胞外小胞であるエクソソームについて着目し、検討していく予定である。 また、MS類似疾患である抗MOG抗体関連疾患患者において異常歯根吸収を認める患者を経験した。これまでの解析方法ではMSモデルマウスに歯根吸収を生じていないが、投与する菌種の変更を行い、今後も継続して検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたモデルマウスからT細胞を分離し培養する実験では予期した結果を得ることができなかった。しかし、実験群のマウスから採取した血清が破骨細胞分化を促進する結果を得た。関与した因子を検討するために、血清中の産生タンパク質量の網羅的な解析や、着目した因子を中和抗体で阻害する実験を計画しているが、今年度では十分量の試料を採取できずに実施できなかった。実施できなかった実験および解析は次年度に計画しているため、次年度使用額として繰り越した。
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