2023 Fiscal Year Research-status Report
末梢組織損傷部位のスフィンゴシン1リン酸は神経障害性疼痛の発生に関与するか
Project/Area Number |
21K17109
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金丸 博子 (塚田博子) 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30464019)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | スフィンゴシン1リン酸 / 末梢神経 / 慢性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴシン1リン酸は膜成分であるスフィンゴ脂質が損傷を契機に代謝されて生ずる脂質メディエーターであり、中枢神経の海馬では外部からのスフィンゴシン1リン酸による刺激が神経細胞の持続的な興奮を惹起することが報告されている。この持続的興奮は脱分極によらない神経の自然発火現象や異常興奮との関連が示唆されている。損傷を受けた末梢神経でも同様の現象が生じるとすれば、スフィンゴシン1リン酸による末梢感覚神経の持続的な興奮が上位の中枢神経の可塑性変化をもたらし、最終的に慢性疼痛を生じさせている可能性がある。組織損傷後に発生する慢性疼痛はしばしば難治性であり臨床対応に苦慮するが、末梢組織に起因した疼痛発生メカニズムを解明できれば、慢性疼痛発生の予防という新たな治療法の開発につながると考えられる。 本研究において、外部からのスフィンゴシン1リン酸の刺激に対する神経細胞の応答は、後根神経節より得られた培養神経を用い、神経伝達物質の放出によって解析する計画としていた。しかし、安定した結果が得られなかったため、下歯槽神経を用いた免疫学的手法による検討へと実験計画を変更し現在解析を進めている。具体的にはラットの下歯槽神経を切断し、切断部位に、スフィンゴシン1リン酸受容体に結合し多発性硬化症の治療薬として臨床使用されるフィンゴリモドを投与することにより、下歯槽神経軸索の再生が促進される可能性について現在検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養神経細胞を用いた解析を予定していたが、神経伝達物質の放出に関するデータが安定して得られず実験計画を改めて策定することとなったため。これまで実績のある下歯槽神経切断モデルを使用した免疫学的手法による検討に方針を変更したため、解析に時間を要している。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験手法を変更し、これまで実績のある下歯槽神経切断モデルを使用することとした。また免疫学的手法による検討に方針を変更し、現在解析中である。下歯槽神経切断部位にスフィンゴシン1リン酸受容体へのアゴニストであるフィンゴリモドを投与することによって下歯槽神経軸索の再生が促進されるか、またアンタゴニスト投与によって神経再生へ影響が出るかどうかを解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)実験計画の変更により、実験中断期間があったため。また、既存の試薬や設備を利用したため、必要経費を抑えられた。 (使用計画)動物実験および抗体や試薬の購入に使用する。また学会発表や情報収集のための旅費として計上する。
|