2021 Fiscal Year Research-status Report
Cisplatin-resistance via cancer extracellular vesicles in oral squamous cell carcinoma.
Project/Area Number |
21K17115
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小野 喜章 岡山大学, 大学病院, 医員 (30845384)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 口腔癌 / シスプラチン / 薬剤耐性 / 細胞外小胞 / 銅輸送経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌の進行例や再発例の多くはシスプラチン (CDDP) を用いた化学療法に耐性を示し, 予後は不良である. CDDPの耐性を獲得するメカニズムに関して様々な報告があるものの, 実際の治療においてCDDPに対する耐性の多くは多因子性と考えられている. そのため有害事象の軽減や個別化治療などの観点から, 新たなメカニズムの解明や新規治療標的の探究が求められている. 近年, エクソソームをはじめとする細胞外小胞 (EV) が多くのがん種における治療抵抗性の主要な調節因子として注目されている. 抗癌剤の細胞外への排出や, 細胞性質変化の誘導に働くことが報告されているが, 口腔癌のCDDP耐性獲得機構にEVが関与していることを示した報告は少ない. また, 口腔癌細胞の分泌するEVが, どのようにCDDP耐性獲得に働くのか, という課題が存在している. 申請者の予備的実験から, CDDP耐性口腔癌細胞から精製したEVをCDDP感受性口腔癌細胞に添加することでこのレシピエントの細胞がCDDP耐性能を獲得したこと, そして口腔癌細胞にEV分泌阻害剤を作用させることで,CDDPに対する感受性が増強されたことから口腔癌におけるEVのCDDP耐性への影響は十分考えられうるものである. 本研究では口腔癌から採取したEVを用い, 口腔癌の薬剤耐性メカニズムにおけるEVの果たす役割について明らかにする. さらに, EV中における薬剤耐性関連分子を明らかにし, 薬剤耐性を克服する新たな治療法の探索を行う. 初年度である令和3年度では, In vitroにおいて口腔癌細胞株のCDDP耐性亜株の樹立, EVの精製および機能評価, ターゲット分子の同定さらにEVとの関連性評価に至るまで研究を進めることができた. 進捗状況蘭にその詳細を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CDDPを添加した培地にてSAS細胞の持続培養を行い, 耐性株を作成した (SAS-R). その結果, CDDPへの耐性度はIC50で2-3倍程度となった. 両細胞に対して同濃度のCDDPを曝露させたところ, SAS-R細胞はSAS細胞と比べてアポトーシス誘導因子であるCaspase-3の活性化 (Cleaved caspase-3の発現) が抑制された. また, 近年CDDPの細胞内流出入に銅トランスポーターの関与が報告されている. なかでも, SAS-R細胞はSAS細胞と比べてATP7Bの有意な発現増強を認めていた. 以上から, CDDP耐性機構に, ATP7Bの発現増強が関連していることが示唆された. 次に, 両細胞の培養上清からEV精製を行なった. 電子顕微鏡撮影および粒子径分布測定の両解析において, 50-200 nm範囲内の粒子サイズのEVを精製できていることを確認した. これらEVをExoGlow-EV Labeling Kit (SBI社) を用いて蛍光標識し, 濃度別に培養細胞に添加したところ, 濃度依存的に細胞内へのEV取り込みが促進する傾向であった. これらEV精製法および解析法について, 今後も応用していく予定である. ATP7B発現がCDDP感受性およびEV分泌能に影響するか調べるため, ATP7BノックダウンSASを樹立したところ、対照群と比べてCDDPに対する感受性の上昇を認めた. さらに, EV分泌能の低下傾向を認めた. EV生成を阻害する働きを示すGW4869をSASに作用させたところ, 対照群と比較して, EV中のcargo protein (CD9, EpCAM) の減少および細胞内ATP7Bの発現低下を認めた. 以上より, ATP7B発現とEV分泌能は関与していることが示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
EVの研究は, 主に癌の分野において, 疾患のメカニズム解明から診断, 治療までの苛烈な競争が世界中で繰り広げられており, 年々関連する文献報告が急速に増えている. 細胞内成分の放出機構であるEVは, 細胞間相互作用の媒体として重要であり, 癌の悪性度進行に関与することが明らかとなっている. また, EV内の含有物を調べることによる癌診断マーカーとしての実用性についても多くの研究者が着目している. しかしながら, 口腔癌の悪性度進展に伴うEVの分子機序や機能の詳細は未解決の問題として残っており, 関連する報告は少ない. 本研究では腫瘍微小環境におけるEVを介した薬剤耐性獲得メカニズムを解明するだけでなく, 口腔癌進展における画期的なバイオマーカー開発においても重要な意味を有する. 口腔癌における新規治療方法の開発につながる重要な成果となると確信している. 近年, 銅トランスポーターのCDDP細胞内流出入への関与が注目され, その報告は散見されるが, EVとの関連についての報告は未だなく, 本研究の着眼点は新規性が高いと考える. 現在も上記の結果につづく研究成果を出すべく, 本研究プロジェクトは継続中である. 具体的に, 令和4年度以降は, EV作用によるATP7Bの発現変化の評価, ATP7B shRNAを用いたEV分泌とATP7B発現の相関に関する検証を行なっていく. また, 同時にIn Vivo実験を開始し, 生体におけるEVとATP7Bの関連を検証し, CDDP耐性克服という大きな課題に向けて進めていく.また, 本研究における成果を遅滞無く世界へ発信するために, 現在進行中のプロジェクトの研究データについて国際専門誌へ投稿準備を予定している.
|