2022 Fiscal Year Research-status Report
Cisplatin-resistance via cancer extracellular vesicles in oral squamous cell carcinoma.
Project/Area Number |
21K17115
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小野 喜章 岡山大学, 大学病院, 医員 (30845384)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔癌 / シスプラチン / 薬剤耐性 / 細胞外小胞 / 銅輸送経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌の化学療法においてシスプラチン(CDDP)は中心的役割を担っており,その耐性機構の解明と耐性克服は重要な課題である.CDDP耐性機序の一つとして,銅輸送経路を介した白金排出機構が注目されている.なかでも,銅輸送ATPase(ATP7B)は細胞質中の CDDPを後期エンドソーム内腔へ取り込み,リソソームを介して細胞外へ排泄する.この銅輸送系を制御する因子の解明は, 口腔癌の薬剤耐性という難問を解決するための大きな一歩となる可能性がある.更に,最近の研究では,細胞外小胞(EV)が癌の治療抵抗性の主要因子として注目されている.本研究では口腔癌におけるEVと銅輸送経路を介したCDDP耐性機構について明らかにすることを目的とする. 2年目である令和4年度では,初年度に得られたIn vitro実験結果に対する追試および再現実験を中心に行うことができた.また, In vivo実験として,マウス生体内に対するEV生成阻害剤の効果とATP7B発現の相関性を検証することができた.その他,頭頸部領域の組織サンプルを用いたtissue microarray法により,ATP7Bについて免疫組織化学染色を行うことで,頭頸部癌におけるATP7Bの臨床的意義について検証することができた.さらに,令和4年度では,申請者の研究室内にて確立した口腔癌の3次元培養モデルを使ったCDDP耐性機序解明に関する報告が初の責任著者として国際専門誌に掲載された.現在,本申請課題について,申請者の指揮のもと大学院生2名とともに遂行中である.2022年度内の学会発表においては,申請者および大学院生2名それぞれが本研究テーマおよび関連テーマについて筆頭発表し,3つの学会にていずれも学会賞を獲得した.また現在,本申請課題の先行研究・関連研究で得られた研究成果を2編それぞれ国際専門誌に投稿中(査読課程中)である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標の通り,国際専門誌への第一報の投稿に至ることができた.2年目は動物実験以外のin vitroの検討を優先して行うこととしていたが,予想の進捗より進み動物実験に着手することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らが, 本研究着想に至った経緯として, 口腔癌細胞が分子標的抗体医薬「セツキシマブ」による攻撃を受けた際に, EVを使ってその抗体医薬を細胞外に排出することで抗癌作用の抑制に働くという新しい薬剤耐性メカニズムを発見した経緯がある. このような新たな薬剤耐性機構の発見は, 癌研究・創薬・医療に一石を投じるものである. EV内の含有物を調べることによる癌診断マーカーとしての実用性についても多くの研究者が着目している. しかしながら, 口腔癌の悪性度進展に伴うEVの分子機序や機能の詳細は未解決の問題として残っており, 関連する報告は少ない. 本研究では腫瘍微小環境におけるEVを介した薬剤耐性獲得メカニズムを解明するだけでなく, 口腔癌進展における画期的なバイオマーカー開発においても重要な意味を有する. 引き続き, In vitro, In vivo両方の実験を継続し, 再現性・信憑性の高い実験結果を追求することを目指す. 最終的に, 上記生物学的実験で得られた結果を臨床検体データと比較解析するため, 当院口腔病理学教室およびバイオバンクにストックされた臨床検体 (腫瘍組織, 血液) を用いた解析を進める. 本検証によって得られたEVおよびATP7BのCDDP耐性機構を活かし, 新規バイオマーカーによる診断ツール開発や薬物輸送システムを応用した新規治療戦略の開発をすすめる.
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Causes of Carryover |
研究遂行上,動物実験データの追加解析を次年度実施することとなったため,必要な費用に充当する.
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[Presentation] 頭頸部癌におけるセツキシマブ感受性予測バイオマーカーとしてのEpCAMの可能性2023
Author(s)
小野喜章, 梅森洸樹, 中村友哉, 小川辰雄, 金本栄華, 吉田国弘, 小畑協一, 竜門省二, 柚鳥宏和, 河合穂高, 片瀬直樹, 奥井達雄, 長塚仁, 伊原木聰一郎
Organizer
第41回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会
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[Presentation] シスプラチン耐性機構の解明に向けた口腔癌の細胞外小胞と銅輸送経路の検討2022
Author(s)
小野喜章, 小川辰雄, 竜門省二, 吉田国弘, 金本栄華, 梅森洸樹, 坂本裕美, 増井正典, 小畑協一, 奥井達雄, 伊原木聰一郎
Organizer
第58回日本口腔組織培養学会学術大会