2021 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛・前庭器官・半規管および体性感覚の寄与を区別した低周波音の受容特性の解明
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21K17265
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田鎖 順太 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40791497)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低周波音 / 振動感 / 前庭器官 / 周波数調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,低周波音による影響の生理学的メカニズムの解明のため,その受容機序に関して実験的に解明することを目的としている。 本年度は,低周波音によって生じる知覚反応である「振動感」に注目し,この知覚が強く生じる音圧レベル・周波数帯域に関する検討を行った。また,その低周波音曝露条件において,ビデオ式アイトラッカーを用い,眼振の有無に関する検討を行った。 低周波音による振動感に関しては,従来の研究では周波数が高いほど知覚閾値が低下することが示唆されていたが,音圧レベル一定の条件で周波数を様々に変化させる音響心理実験を行ったところ,音圧レベル70~90dBの曝露条件において,40~50Hz付近で振動感が最も強くなることが示された。ただし,曝露する音圧レベルが低い場合,振動感が最も強くなる周波数には上昇する傾向がみられた。 振動感を特定の周波数で強く感じたことは,低周波音の受容に蝸牛以外の器官が寄与している可能性を強く示唆しており,変位や振動の感覚知覚を司る前庭器官が重要な役割を果たしていると推測される。周波数反応特性に関しては共振を用いて説明できる可能性があるが,最も強い周波数が推定された段階であり,より詳細かつ定量的な検討が求められる。 眼球運動に関しては,音圧レベル100dB以下・周波数100Hz以下の様々な純音を曝露させる予備実験を行ったが,眼振状の緩やかかつ大きな眼球位置の変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体反応の計測に関して,眼球運動に次いで誘発電位等を測定する予定であったが,眼球運動の測定および眼振検出の検討に時間を要したため,当初の予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
低周波音による「振動感」に関して,等価な知覚反応をもたらす曝露条件を測定することによって,周波数反応特性の解明を進める計画である。再現性が高く音の大きさに左右されない実験条件に関して詳細な検討を行っていく。 また,客観的に低周波音による反応を計測するため,低周波音と誘発電位,心拍,等の生体指標,および知覚反応の関係に関して実験により明らかにしていく計画である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために研究発表に伴う旅費がかからなかったこと,予備実験のため実験協力者への謝金の支出がなかったこと等の理由により,次年度使用額が生じた。 翌年度の,生体反応測定機器の購入費および被験者への謝金に充てる計画である。
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