2021 Fiscal Year Research-status Report
ライノウイルス陽性患者が呈した呼吸器症状以外の重症化の機序解明を目指す研究
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21K17282
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
岡田 和真 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (50806354)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ライノウイルス / 公衆衛生学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ライノウイルス感染による呼吸器症状以外の重症化(nRS)の機序解明を目的に実験をおこなっている。2021年度は①CDHR3を恒常発現する培養細胞株の樹立、ならびに②nRSを引き起こしたウイルス株のゲノム配列解読の実績を得ることができた。 ①はnRSを引き起こしたライノウイルス株の分離を目的に行っている。一部のライノウイルス種の受容体であるCDHR3を恒常発現する細胞株の樹立を完了した。これにより、ライノウイルスのすべての種が感染可能な細胞を得ることができた。一方で、ライノウイルスの細胞内での複製効率を上げるため自然免疫の主要な調節因子であるMDA5の発現を欠失させる計画であったものの、技術的な問題により2021年度での同計画の達成はできなかった。 ウイルス分離用の培養細胞株の樹立を目指す一方で、nRSに関与したライノウイルス株を中心にゲノム解析を進めてきた(②)。ライノウイルスのフルゲノムがおよそ7100bpであるのに対し、現在計5株について6900bpほどを解読済みである。残りの配列もこのまま解読を進め、全ゲノム配列の解読が近い内に完了する予定である。nRSに関与したウイルス株に加え複数株のフルゲノムの配列情報が揃うことにより、各株の相同性解析が可能になり、nRSに関与する可能性のあるゲノム領域の探索を行うことができる。このことは本研究の最終目標であるnRSの機序解明に大きく貢献することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では2021年度はウイルス分離用の培養細胞株を樹立を完了する予定であった。しかしながら、自然免疫の主要な調節因子であるMDA5の発現欠失が上手くいかず、樹立完了には至っていない。 その一方で、患者検体よりウイルスゲノムを抽出し、nRSに関与したウイルス株の全ゲノム配列解読を進めてきた。その結果、対象株のフルゲノム約7100bpのうち、約6900bpの解読に成功しており、ゲノム情報をもとにした研究を進められる見通しがたってきている。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き効率的なウイルス分離を目指し、遺伝子改変技術を用いた培養細胞株の樹立を目指す。また同時に、全ゲノム配列の解読を達成し、得られた全ゲノム配列をもとに相同性解析を行う。同解析により、nRSに関与する可能性のあるゲノム領域の発見を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの検査業務が多忙であり、十分に研究業務に時間を割けない時期が存在した。以上の理由から次年度使用額が発生している。同助成金は、今年度から次年度に引き継ぐ実験に適用する予定であり、問題なく使用される。
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