2022 Fiscal Year Research-status Report
ライノウイルス陽性患者が呈した呼吸器症状以外の重症化の機序解明を目指す研究
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21K17282
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
岡田 和真 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (50806354)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ライノウイルス / 非呼吸器症状 / 脳炎 / 心筋炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非呼吸器症状(nRS)を呈した患者より検出されたライノウイルスに関する研究を行っている。ライノウイルスは一般的な風邪の主要な原因ウイルスとして有名である一方、過去には神経症状を呈した患者や心膜炎の患者からライノウイルスが検出された事例も報告されている。本研究では、そのようなnRSの発症に関与したライノウイルスを検出および解析することにより、ライノウイルスがnRSを引き起こす可能性を検証している。 2022年度は、いくつかのウイルス株の全ゲノム配列解析が完了した。一方、5'末端の残り100塩基ほどが解読できていない株が残っており、同領域の解析に有用な5'RACE法を用いて解析をすすめる予定である。さらにnRSの患者が多く確認された2015年度に着目し、同年度に検出されたライノウイルスの5'utr領域のゲノム解析、ならびに同配列による系統樹解析を行った。この系統樹解析には2015年度の検体からは検出されなかった血清型も加え、各血清型間の遺伝的な距離を検証した。その結果、nRS患者より検出されたA105, A21の2つの血清型が比較的近縁に位置することが明らかとなった。特にA105は3件のnRS患者から検出された。特定の血清型がnRS患者より集中して検出された事例はこれまでに報告されておらず、A105がnRSの発症に関与する可能性が示唆された。以上の結果を第69回ウイルス学会学術集会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5'RACE法による残りのゲノム末端の解読が難航したため。解読のために必要なウイルスゲノム量が予想よりも上回り、物理的にサンプル量が足りない検体も存在する。全ゲノムを解読するウイルス株の数を選別して対応する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
技術的な問題によりウイルス分離に用いるゲノム編集培養細胞株の樹立は完了していない。そのため計画を変更し、検体を用いたウイルス分離ではなく、ウイルスゲノムより人工的に感染性ウイルスを回収するリバースジェネティクス法を用いることとした。現在、全ゲノム配列を解読済みのウイルス株を用いて、リバースジェネティクスに必要なゲノムプラスミドを作成中である。同プラスミドを用いて今後ウイルス回収を行い、回収されたウイルスを用いて当初予定していた各種培養細胞株での増殖性の比較を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画に遅れが生じているため。実験機材、ならびに試薬の購入に使用する予定。
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