2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of New-Type Proton Conductors via Intrinsic Oxygen Vacancy Layers
Project/Area Number |
21K18182
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
八島 正知 東京工業大学, 理学院, 教授 (00239740)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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Keywords | イオン伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は従来の高イオン伝導体の材料設計法である「ドーピングによる伝導度向上」のみならず、全く異なる新しい手法「本質的な酸素空孔を利用する、あるいは八面体の配列を制御することによる、新型高イオン伝導体の探索」を提案して実証すること、イオン伝導の構造的要因を明らかにすることを目的としている。2021年度の主たる成果は、次の①~④である。 ①本質的な酸素空孔を有するペロブスカイト関連酸化物BaY1/3Ga2/3O2.5が新型の酸化物イオンープロトン伝導体であることを見出した。中性子回折による構造解析により、本質的な酸素空孔の存在を実証した。特に、BaY1/3Ga2/3O2.5は極めて広い電解質領域を持ち、優れた化学的・電気的安定性を示すことがわかった。 ②Ba7Nb4MoO20は本質的な酸素空孔層を有する興味深い新型の酸化物イオンープロトン伝導体である。NbをTaとMoで置換することにより、Ba7Nb4MoO20と同型構造の新しい酸化物イオンープロトン伝導体Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15を発見した。Nbに比べてTaは還元されにくいので、Ba7Nb4MoO20に比べてBa7Ta3.7Mo1.3O20.15は広い電解質領域を持ち、優れた化学的・電気的安定性を示すことがわかった。 ③Ba3WNbO8.5は本質的な酸素空孔層を有する興味深い新型の酸化物イオンである。未解明であったBa3WNbO8.5における酸化物拡散経路を実験で可視化して、酸化物イオン伝導の構造的要因を明らかにした。 ④(110)層状ペロブスカイトBaNdScO4は特異な八面体配列のため、八面体内だけではなく、八面体間のプロトン伝導が期待される。BaNdScO4、BaNdIO4とその固溶体が新型プロトン伝導体であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題は従来法とは全く異なる新手法により、新型高イオン伝導体をいくつも発見しており、当初の計画以上に進展している。 ①本質的な酸素空孔を有するペロブスカイト関連酸化物BaY1/3Ga2/3O2.5が新型の酸化物イオンープロトン伝導体であることを見出した。論文として発表した。②本質的な酸素空孔層を有する新しい酸化物イオンープロトン伝導体Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15を発見した。Ba7Ta3.7Mo1.3O20.15は広い電解質領域を持ち、優れた化学的・電気的安定性を示すことがわかった。本成果はドイツの学術誌Smallに掲載され、プレス発表を行い、新聞にも掲載された。 ③本質的な酸素空孔層を有するBa3WNbO8.5における酸化物拡散経路を実験で可視化して、酸化物イオン伝導の構造的要因を明らかにした。特に核密度から伝導度の活性化エネルギーを説明できたことは価値が高い。米国化学会のJ. Phys. Chem. Cに本成果が掲載された。 ④(110)層状ペロブスカイトBaNdScO4は特異な八面体配列に着目して発見した価値が高い研究であり、英国化学会のJ.Mater. Chem. Aに成果が掲載された。 これらの成果により国際会議、国内会議で基調・招待講演を行うと共に、依頼解説記事も執筆した。また、2021年(英国のFop)と2022年(イタリアのMalavasiら)にJ. Mater. Chem. Aの二つの総説においても、本成果は高く評価された。これらのことは発見した新しい伝導体の性能の高さや設計思想、伝導機構が世界的に注目されている。また、様々なイオン伝導体の伝導機構を精密な結晶構造によって解明した。また、国際・国内共同研究を積極的に行った。若手・学生を育成し、2021年度の学会等での受賞は10件にもなっている。以上の理由より、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、本質的な酸素空孔を含むBaY1/3Ga2/3O2.5、本質的な酸素空孔層を含むBa7Ta3.7Mo1.3O20.15、特異な八面体配列を含むBaNdScO4など数多くの新型プロトン-酸化物イオン伝導体を発見することに成功した。これらの成果は、従来の高イオン伝導体の材料設計法である「ドーピングによる伝導度向上」のみならず、本課題で提案している、全く異なる新しい手法「本質的な酸素空孔を利用する、あるいは八面体の配列を制御することによる、新型高イオン伝導体の探索」によって実現された。2022年度以降は本質的な酸素空孔を含む、より多くの新物質を探索することに挑戦していく。本質的な酸素空孔を含むプロトン伝導体や酸化物イオン伝導体の伝導機構は殆ど研究されておらず、構造物性の研究も多くの成果が上がると期待できる。 世界最高クラスのプロトン伝導度を示す新型プロトン伝導体を発見しつつあるので、中性子回折や電気伝導度の水蒸気分圧依存性や熱重量も検討する。特に、中性子回折により水素(プロトン)の位置と熱振動を調べることが重要である。これらプロトン伝導体および発見した世界最高クラスの酸化物イオン伝導体の類縁物質を探索して、より優れたプロトン伝導体および酸化物イオン伝導体の発見を目指す。発見した新物質について、電気伝導度の温度および酸素分圧依存性および水蒸気分圧依存性、高温X線回折と中性子回折による高温における結晶構造とその変化および相転移について調べ、新しい構造科学分野を切り開いていきたい。さらに、第一原理分子動力学計算を行い、プロトンや酸化物イオンの移動メカニズムの研究も推進する。引き続き国際・国内共同研究を積極的に行い、若手・学生を育成し、国際的なプレゼンスも高めていく予定である。
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Research Products
(60 results)