2022 Fiscal Year Research-status Report
デザイン型育種プロセスの創成とインフルエンザ抵抗性ニワトリ作製への展開
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21K18186
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西島 謙一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (10262891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西藤 岳彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 部長 (00263393) [Withdrawn]
内田 裕子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長 (80442797)
佐久間 咲希 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (00849747)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ニワトリ / トリインフルエンザ / 抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザ特に鳥インフルエンザは世界中に蔓延している状況が続き、依然として危険な状況である。特に、高病原性鳥インフルエンザは高い致死性と強い伝播性から、家畜伝染病予防法において、発生農場の全家禽の殺処分等の防疫措置をとることが定められている。本研究では、鶏が本来持つインフルエンザ耐性遺伝子を新規に同定することを目指す。名古屋大学生命農学研究科附属鳥類バイオサイエンス研究センターで維持されている鶏から見つかった高病原性鳥インフルエンザ抵抗性の遺伝背景を持つ個体が含まれる系統について原因遺伝子の同定を目指す。発見したインフルエンザ耐性遺伝子をコマーシャル系統に導入することができれば、鳥インフルエンザ蔓延防止と食糧の安定供給にも大きく貢献できる。本年度は昨年に続き原因遺伝子の同定へ向けたゲノム解析を行った。 1. 抵抗性系統と感受性系統を交配して作出した第2世代について、高病原性鳥インフルエンザ感染実験で示唆されたゲノム領域について個体別に決定したゲノム配列を比較したところ、当初想定していた潜性ホモ単一遺伝子による抵抗性という条件では該当する配列は見出されなかった。このことから、マイナーな遺伝子が最終的な高病原性インフルエンザに対する生存/死亡に影響を与えている可能性が想定された。 2. 昨年度実施した2回目の高病原性鳥インフルエンザ感受性試験に供した個体について、ゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンサーによりゲノム配列を決定した。前項の結果を受け、生存個体のうち全くウイルスを排出しなかった個体を完全な抵抗性個体、2-3日で死亡した個体を感受性個体として選択してシーケンス解析に供した。現在、結果について解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インフルエンザ抵抗性ニワトリの原因遺伝子の同定を目指した解析を進めている。当初計画では、初年度に配列を決定したゲノム配列シーケーンス結果の解析により、候補領域を1カ所に絞り込むことで、領域内の候補遺伝子数十個程度を網羅的に破壊して細胞レベルでの感染性の確認と遺伝子同定を速やかに進める予定であった。しかし、遺伝様式が当初想定していたほど単純ではない可能性が示唆されその対応に時間を要している。高病原性インフルエンザ感染に対し、ほとんどの個体が数日以内に死亡する中で10日間以上生存する個体が存在することを受け、潜性ホモにより耐性をもたらす単独の遺伝子を想定し、個体別にゲノムを決定することで感受性個体においてホモになる遺伝子を除外し当該ゲノム領域決定を目指したが、条件に合致する遺伝子配列候補は認められなかった。生存/死亡の二値だけでなく、生存個体の中に全く感染が認められずウイルス排出をしない個体や、少量のウイルスを排出している個体が併存することが分かった。このことから、複数の遺伝子が関わっている可能性が示唆され、さらに解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
関連する可能性のある複数のゲノム候補領域を検出するために、別ロットの感染実験個体サンプルを用いて解析個体数を増やしゲノムシーケンスを行った。これらのゲノムの相違と、ウイルス感染性、生存に至る抵抗性などの相関を詳細に調べる予定である。初回のゲノム解析についても配列決定は個体別に行っているため、感染実験の結果を再度精査することで新たなグループ分けと、それのもとになるゲノム領域候補の解析が可能である。今回新たに行った感染実験個体群のゲノム配列も個体別に解読しており、2回分の解析結果を合わせて再度詳細に解析することにより候補遺伝子の抽出特定を進める。一方、in silicoの解析を受けて、ニワトリ細胞レベルで遺伝子ノックアウトを行う手法については、研究グループの中で経験の蓄積が進んでおり、候補遺伝子をピックアップできた際のノックアウト細胞株の樹立そのものは効率よく進めることが可能である。既知のウイルス感染抵抗性遺伝子のうちには、非感染時の通常個体の生存に悪影響を与える例も報告されているが、抵抗性個体から絞り込んでいく本研究はその恐れが少ない。細胞レベルで個体レベルの感染抵抗性を再現できれば、効率よい解析が可能である。
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Causes of Carryover |
絞り込みが進まなかったため、候補遺伝子を細胞レベルでノックアウトして解析する実験が実施できなかった。シーケンスデータの再解析により候補の数を絞った上次年度に実施したい。
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Research Products
(1 results)