2021 Fiscal Year Research-status Report
膜タンパク質超集積化のための無細胞固相合成システムの開発
Project/Area Number |
21K18324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 / 無細胞蛋白質合成 / 固相合成法 / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
全タンパク質の半数以上を占める膜タンパク質の人工合成法の開発は、基礎生物学、医学、薬学において極めて重要であるが、膜タンパク質の簡便な合成は未だ不可能である。本研究では、この膜タンパク質を固相システムにより大量合成する未踏科学技術に挑戦する。従来、膜タンパク質は、大腸菌などで過剰発現させ、界面活性剤により可溶化したのち、膜に再構成して得られる。この手法は、活性保持が困難、時間・コスト等が非効率、バイオハザードの危険、など多くの問題が残されている。この問題を踏まえ、本研究では、微粒子表面に担持した脂質膜(脂質膜コート微粒子)に対し、無細胞合成法により発現した膜タンパク質の直接組み込みを行うことを目的に研究を行った。研究遂行にあたり、以下の3点に焦点をあてて研究を遂行した。 1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価:シリカなどからなる微粒子に、脂質膜を被覆した脂質膜コート微粒子を作製する。 2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み:無細胞タンパク質合成系(遺伝子DNA,原料アミノ酸など必要な成分が含まれたもの)を用い、膜タンパク質を合成する。 3) 膜タンパク質ハイブリッド微粒子の機能評価とバイオ応用:自動合成システム構築に向け膜タンパク質の多段階組み込みおよび微粒子型ワクチンなどの応用検討を行う。 研究の初年度にあたる2021年度は当初の計画に従い、上記の項目1)および2)について重点的に研究を行った。その結果、コロイド安定性の低い小さいリポソーム(<100nm)とシリカ微粒子を混合し、膜融合を誘起することで、微粒子表面への脂質二分子膜を効率的に担持できることを明らかにした。また膜タンパク質としてコネクシンおよびヘマグルチニンを用い、無細胞膜タンパク質合成系により、微粒子に担持した脂質膜にこれらの膜タンパク質が組み込まれることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる2021年度においては、おもに1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価、および、2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、について重点的に研究をおこなった。以下におのおのの研究項目における進捗状況をまとめた。 1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価 通常、膜タンパク質を保持するために用いられるリポソーム(中空球状の脂質膜)は、比較的不安定かつハンドリングも困難である。この点を解決するため、コロイド安定性の低い小さいリポソーム(<100nm)とシリカ微粒子を混合し、膜融合を誘起することで、微粒子表面への脂質二分子膜の担持を行った。ここで得られる膜の物性として、通常のリポソームと同様の流動性、相挙動を有していることが、膜タンパク質の再構成のためには望ましい。そこで、蛍光回復法を用いた膜流動性の定量、示差走査型熱量計による相状態評価などをおこなったところ、リポソームと類似の膜特性を有していることが示された。 2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み 脂質膜コート微粒子存在下、再構築型の試験管内タンパク質合成系であるPURE systemを用いて目的とする膜タンパク質を発現させる(図3)。この系での膜タンパク質の発現および脂質膜へ組み込んだ膜タンパク質の評価(ウェスタンブロッティング、蛍光抗体標識など)を行い、確かに膜タンパク質が脂質膜に組み込まれることを予備的に明らかにした。モデル膜タンパク質として、まずその取り扱いが比較的容易な、チャネルタンパク質Connexin-43などを用いた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価、および、2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、について重点的に研究をおこなう。まず、1については、用いる微粒子を工夫することでその性質を最大限利用する方法を検討する。脂質膜コート微粒子としてナノサイズの空孔を有する多孔質シリカ微粒子や、申請者が従来から作製してきた多糖からなる多孔質マイクロ微粒子を用いる。また核酸精製などで用いられる磁気による微粒子分離システムへの展開を見据え、磁性ゲル微粒子への脂質膜の被覆についても検討を行う。2)については、チャネルタンパク質、膜受容体、などの膜タンパク質、さらにはさらに、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質など細菌、ウィルス表面に存在する膜タンパク質を再構築した膜タンパク質ハイブリッド微粒子の構築について検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の自粛の流れにより、学生と共同で行う研究においても対面での実施が困難であったため、研究計画を若干縮小して研究を推進した。そのため、当該助成金が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、当初の計画に加えて、前年度遅延している計画について推進する予定である。具体的には、1) 脂質膜コート微粒子の作製と評価、および、2) 無細胞膜タンパク質合成と膜への組み込み、についての研究の拡充を目指す。1については、用いる微粒子を工夫することでその性質を最大限利用する方法を検討する。脂質膜コート微粒子としてナノサイズの空孔を有する多孔質シリカ微粒子や、申請者が従来から作製してきた多糖からなる多孔質マイクロ微粒子を用いる。また核酸精製などで用いられる磁気による微粒子分離システムへの展開を見据え、磁性ゲル微粒子への脂質膜の被覆についても検討を行う。2)については、チャネルタンパク質、膜受容体、などの膜タンパク質、さらにはさらに、ヘマグルチニン、スパイクタンパク質など細菌、ウィルス表面に存在する膜タンパク質を再構築した膜タンパク質ハイブリッド微粒子の構築について検討する。
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